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海外のシグネットリング -彫刻の最高峰とは-

更新日:2022年5月30日

日本でも、近年注目を集め始めている格式のあるリングが、シグネットリングです。


シグネットリングの歴史についての説明は別の記事に譲ると致しまして、今回は日本を飛び越え海外のシグネットリングの最高峰のブランドについて、お話しさせていただければと思っております。


皆様を、彫刻の最高峰の世界へお連れしたいと思います。

 

日本のシグネットリングのトレンド


日本のシグネットリング はシンプル

Bruno Reid, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons


最近では、数多くのシグネットリングを日本のブランドが制作・販売されているのを目にします。あくまで個人の感想と致しましては、シンプルなイニシャルのモノグラム(刻印)を彫刻されたシグネットリングが多いような気がします。


これは単純に日本人がシンプルなデザインを好んでいるということもありますが、単純に優れた職人が日本にはまだまだ少ないということがあると思います。


(誤解のないように触れておきますが、もちろん日本にも優れた彫刻師・彫金師は存在していますし、私が個人的に尊敬する素晴らしい職人の方々も確かに存在しています。しかしながらその数はまだまだ少ないというのもまた事実です。


さらに言えば、シグネットリングの本場でもあるイギリスでも、優れた彫刻家達は高齢化とともに引退することが多く、新しい職人達の育成に頭を悩ませているそうです。)


当然ですが日本には”シグネットリング”というジュエリーの歴史を持っておらず、ある意味で言えばその歴史は始まったばかりであるため、今後のトレンドの変遷が楽しみなところでもあります。

 

海外のシグネットリング


さて、それでは海外に目を向けていきたいと思います。


シグネットリングとは元々が貴族や富裕層が、自らのイニシャルや家紋などを指輪に彫らせ、それを印鑑の代わりにしていたことから始まったとされます。(起源を遡れば古代エジプトに行き着くとされておりますが、現在の形の源流としては貴族・富裕層のリングにあるとされます。)

非常に精密な技術が要求されるリング

Hallwyl Museum / Helena Bonnevier / CC BY-SA, Public domain, via Wikimedia Commons


そのため海外では多くの彫刻師・彫金師達が存在しており、日々切磋琢磨を繰り返しており、彫刻を専門で教える学校やコミュニティも数多く存在していました。


そのような背景もあってか、世界では日本でも人気のシンプルなシグネットリングはもちろん、複雑精緻な家紋やイニシャルが掘り込まれた、超絶技巧を誇る芸術品のようなシグネットリングが多くの職人・ブランドの手によって、生み出され続けております。


ここからは、海外のシグネットリングブランド、そして職人についてご紹介させていただきます。

 

”芸術品”の名がふさわしい本格派ブランド -London Engraver-


多くを語る前に、まず彼らの実際の彫刻・シグネットリングをご覧いただきたいと思います。

london engraverのシグネットリング
恐るべきほどの精緻な彫刻が施されたリング

最近のシグネットリングでは、複雑なデザインを掘り込む際に工数を省くためレーザー彫刻機を使用し、ものの数分ほどで仕上げられているものもある中で、


この複雑なデザインを手彫りで表現するという、まさに本物の職人技を見せてくれるブランドが、London Engraverです。

 

London Engraverの始まり


Ray Hoodと彼の妻であるCarlyによって2013年に設立されたLondon Engraverは、現在では世界中のファッショニスタやセレブリティ・VIPたちから多くのオーダーを受けています。


London Engraverの職人であるRay Hoodがこの彫刻の世界に入ったのは16歳のことでした。


祖父が第二次世界大戦でこの世を去った後、彼は祖父がGarrard&Coで働いていた腕の良い彫刻師であったことを知りました。

Garrard&Coの荘厳な店舗

Gryffindor, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons


Garrard&Coは1735年創業の非常に歴史のある超一流ブランドであり、


その技術の高さから1843年には何とあのヴィクトリア女王から王冠宝飾職人Crown Jeweller(クラウン・ジュエラー)の称号を授与され、その後も英国王室御用達のブランドとして世界にその名を馳せています。


彼(Ray)の父親は、祖父の作品の一部を彼に見せてくれました。16歳だったRayはその作品の美しさにとても感動し、しかもそれらがすべて手作業で作られたことを知り、その技術・方法を学びたいと考えました。


その後彼は、祖父のつてを頼りに、Garrard&Coで2週間の仕事を得ることができました。彼はそこで改めて彫刻の魅力を感じ、Rayは祖父の歩んだ道をたどることを決めました。


彼はまずthe Sir John Cass School of Artに1年間通い、そこで直線と円をカットする方法を学びました。


次に彼は彫刻の見習いとして祖父が働いていたGarrard&Coで働き始めました。そこには世界最高峰の職人達(祖父の古い同僚たち)が在籍していたため、


彼はそこで世界最高峰の彫刻技術を学び取ることができたのでした。

Garrard&Coの職人の技術が窺い知れる花瓶

Garrard&Co随一の職人、Robert Garrardによって制作された花瓶 1864-1865.


彼はその後も独自に研鑽を重ね、F1、ウィンブルドン、FAプレミアリーグカップなど世界的な面々から仕事を依頼されるほど、世界的な彫刻師としてその名を知られるようになったのでした。


彼の彫刻の技術はもちろん、彼自身のデザインセンスには驚かされます。

シグネットリングの全盛期であった中世ヨーロッパのクラシックな家紋のスタイルはもちろん、現代的なバイカーリング風のデザインまで、


芸術的なデザインと、それをこの世に顕現させることができる稀有な技術の持ち主として、とても尊敬する職人の一人です。


彼のブランドのサイトでは、さらに沢山の世界最高峰の彫刻を見ることができます。是非一度ご覧いただければと思います。


London Engraver

Mail:enquiries@londonengraver.com

Address:Adelaide, Australia(完全予約制)

 

彫刻師の最高峰 -Sam Alfano-


世界には実力のある彫刻師がいますが、その中でも最高峰のランクにあるのが、"Master Engraver"Sam Alfanoその人です。


彼の素晴らしさを知るには、まず彼の作品を見ることが一番でしょう。

台座だけでなく側面にまで彫り込まれたリング

シグネットリング の職人の頂点

Sam Alfanoがこの世界に足を踏み入れたのは1970年代初頭のことで、通販のカタログで彫刻のためのツールを買い揃え、彼のキャリアをスタートしました。


しかし彼は1970年代の後半まで、あまり本格的に彫刻に取り組むことはありませんでした。なぜならばその頃の彼にとって、彫刻は彼の趣味の一つに過ぎなかったからです。


彼がプロの彫刻師として働き始めるのは1980年代になってからのことで、1982年にNew Orleans Arms Co.のStanley Diefenthalが、Samの類まれな彫刻センスを見出し、彼の個人的な銃のコレクションに彫刻をさせるため、Samを雇うことにしました。

New Orleans Arms Co.の貴重なカタログ

彼はそこで、銃火器へのカスタム彫刻界において世界のTOP2の一角と称される、伝説の彫刻師Lynton McKenzieと出会います。


伝説的な彫刻師であるLyntonの元で、Samは数え切れないほどの技術を学び取りながら、最終的に7年ほどの歳月をNew Orleans Arms Co.の彫刻師として過ごします。


Stanley Diefenthalが惜しまれながらも死去した後、彼は独自にカスタムナイフやジュエリーの彫刻に没頭することとなります。


彼のデザインセンス、彫刻技術は世界でも最高峰とされており、多くの生徒達を抱えるマスターエングレーバーとして、世界中にその名を轟かせるまさに彫刻師の頂点に君臨する人物です。


もはやシグネットリングの範疇で語るべき人物ではないのかもしれませんが、これほどまでに素晴らしい彫刻の技術を持つ彼のことは、シグネットリングの世界を語る上で参考になるのでは、と考えこちらでご紹介させていただいた次第です。


Sam Alfano

Address:45 Catalpa Trace Covington, Louisiana 70433 USA

 

奥深いシグネットリングの世界


当Country Gentlemanでは、これまでに様々なヴィンテージアクセサリーの知られざる歴史を紐解いてきました。


時と共に人知れず埋もれていくヴィンテージアクセサリーの背景や歴史について知っていくたびに、その深淵なる魅力にどんどん取り憑かれてしまう自分に気付きます。


そして同時に、現代において「これが〇〇というアクセサリーである」という物の姿形は、あくまでもその歴史の上澄に過ぎないのだと、毎度ながら驚かされています。


これからも知られざるヴィンテージアクセサリーの世界を皆様にお届けすべく、古き良き物だけに反応する自らの特殊なアンテナを張り巡らせ、新鮮な驚きを求めて放浪を続けていきたいと思います。


Country Gentleman


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