top of page

美しきヴィンテージシルバーカフとS.Kirk & Sonの歴史

ご無沙汰しております。Country Gentlemanです。

ヴィンテージシルバーカフCLP

今回は、滑らからな曲線と手彫りの美しさが際立つモノグラムが配された、ヴィンテージシルバーカフ。


こちらを皆様にご紹介させていただければと思います。


ブランドは、今はなきボルチモアスタイルの名手、S.Kirk & Son。


せっかくのおすすめの作品ですので、ぜひ今回も皆様と共に少しの間タイムトラベルを楽しみたいと思っております。

お時間のございます方は、お付き合いをいただけますと幸いです。


注:今回も私の主観や推察が大いに含まれた記事となりますため、誤訳や誤り等が含まれる可能性がございます。

詳しくはぜひご自身の手でお調べをいただけますと幸いです。

 

S.Kirk & Sonの歴史


シルバー製品(主に銀食器)のブランドであるS.Kirk & Sonの歴史は、一人の優れた銀細工職人によって始まりました。


彼の名はSamuel Kirk(サミュエル・カーク 1793-1872)


ペンシルベニア州出身の彼は、1810年にフィラデルフィアのJames Howell(ジェームス・ハウエル)に弟子入りし、多くの技術をそこで身につけました。


彼はその後メリーランド州はボルチモアに移り、栄えている港に心惹かれます。


そこで同じく銀細工職人であったジョン・スミスと共に、212 マーケット ストリート (後に 106 ボルチモア ストリート) に店を開きました。

お店の名前はKirk & Smithで、彼らのパートナーシップが解消される1821年まで経営されました。


その後彼は長男のヘンリー・チャイルド・カークが1846年に経営に加わるまで、一人で事業を続けました。

「サミュエル・カークとその息子の会社(S.Kirk & Son)」の名は、長男が経営に参加した後で名付けられました。


S.Kirk & Sonのシルバー製品

※こちらはクーパー・ヒューイット・スミスソニアン国立デザイン博物館に収蔵されている、S.Kirk & Sonの作品です。(1880-1890)筆舌に尽くし難いほどの手間と時間とクリエイティビティが注ぎ込まれた傑作です。


社名はその後少しずつ変遷していきますが、(S.Kirk & Sons、S.Kirk & Son Co.、S.Kirk & Son Co. inc

1932年以降はS.Kirk & Sonの名前で確定されます。


さて、本ブログをご覧の皆様は既にご存知のことと思われますが、彼らが主力製品として生産していた銀食器は20世紀に入り、


「高価、手入れが大変、大量生産による価格の低下、代替品の流通」などが原因となり、需要が大幅に減少していきました。


その流れの中で多くの銀食器ブランドが統廃合されていくこととなります。


御多分に洩れずこのS.Kirk & Sonも徐々に経営が厳しくなり、最終的には同じメリーランド州ボルチモアのブランドStieff Companyによって1979年に買収されることとなります。

stieff silver

Frederic C. Chalfant, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons


その際Stieff Companyは会社の最初の名前に"Kirk"を付け、The Kirk-Stieff Companyへ社名を変更しています。


そのまま経営が長く続けられていくかと思われましたが、1990年には卓上用品ブランドであったLenoxにこのKirk Stieffが売却されます。


さらには2007年にLenoxはLifetime Brandsというホーム用品を取り扱うブランドへとKirk Stieffを売却し、現在に至ります。


紆余曲折を経ながらも、彼らの生み出した美しいデザインたちは時を超えて多くの家庭の食卓を彩っています。


参考:

 

ボルチモアスタイルとは


ボルチモアスタイル、と聞いてピンとくる方はおそらくかなりの銀食器マニアではないかと思われます。


ボルチモアスタイルとは簡単に言えば「リポウズ(打ち出し技法)が多用されたスタイル」のことを指します。


インディアンジュエリーがお好きな方であれば、”リポウズ”という言葉を耳にしたことがあるかと思いますが、先述の伝説的職人サミュエル・カークは、このリポウズでアメリカの銀細工の歴史に名を残しています。


リポウズとは簡単に言えば、「銀を裏側からハンマーとノミのような工具で少しずつ打ち出すことで、細かな模様を浮き上がらせる技法」のことを指します。

古代ギリシャで製作されたリポウズ作品

※こちらは紀元前400年頃の古代ギリシャ時代にリポウズで制作されたボウルです。リポウズという製法自体は古代エジプト以前から世界中で存在していたとされます。


この技法が非常に盛んに用いられた地域がボルチモアであったため、ボルチモアスタイルとの呼び名がつくようになったのですが、そもそもこの技法を本格的にこの地域に持ち込んだのがこのサミュエル・カークであったと言われています。


彼の卓越した技術は芸術の域に達しており、今でも多くの美術館(メトロポリタン美術館、デ・ヤング美術館)で彼の圧倒的な技術を目にすることができます。


ちなみにこちらはS.Kirk & Sonが1846年に製作したティーポット(カリフォルニア州サンフランシスコのデ・ヤング美術館で展示)です。

ヴィンテージシルバーティーポット

美しい自然の風景がそのまま銀という素材の中に封じ込められてしまったような、生き生きとした描写に心を惹かれる名作です。


こちらも同じくデ・ヤング美術館で展示されているボウルです。

美術館に収蔵されている芸術作品

奥に器の内側が見えますが、外側に向かって銀が打ち出されていることがわかります。


どの程度の力を加えればどの程度の盛り上がりがあるのか、全体のバランスを考えながら少しずつ打ち出す必要があるため、紛れもなく高難易度の技術を用いて制作された芸術品として高い評価を得ています。


 

S.Kirk & Son Sterling?

さてここで、今回ご紹介するヴィンテージシルバーカフの内側に目を向けてみます。


すると刻印が「S.Kirk & Son Sterling」となっていることに気づきます。


大抵の銀製品はこの刻印(ホールマーク)を基に、ある程度正確に年代の判定を行うことが可能です。


多くの銀食器ブランドは年代ごとに社名を変更していることが少なくなく、S.Kirk & Son社も何度も社名を変更しています。


1815-1821 Kirk&Smith

1821-1846 S.Kirk(Saml Kirk)

1846-1861 S.Kirk&Son

1861-1868 S.Kirk&Sons

1868-1896 S.Kirk&Son

1896-1925 S.Kirk&Son Co.

1925-1932 S.Kirk&Son Co. inc. Sterling

1932-    S.Kirk&Son Sterling


上記の歴史から、この作品は1932年以降に製造された可能性が高いことが分かります。


参考書籍:Encyclopedia of American Silver Manufacturers(Dorothy T. Rainwater · 1975)

 

年代の判定

製造年は1932年以降である可能性が高いことがわかりましたが、この刻印がいつ頃まで使用されていたのかが判明しておりません。


ここからはあくまでも推察ですが、「この作品は1932年から1979年の間に製造された可能性が高い」と考えられます。


理由は主に以下2点です。


1:シルバーカフのような装飾品が1979年以降も製造される可能性が低い

S.Kirk & SonはStieff Companyに買収された1979年時点で経営的に困難な状況にあり、さらに20世紀以降の銀食器に対する需要低下から考えれば、主力商品である銀食器以外の贅沢品を製作する可能性が低い。


さらに一人一人のユーザーのモノグラムを彫るような、手間がかかる事業が継続されていた可能性も低い。


(ちなみにシルバーカフは1963年の時点でカタログに記載されていることは確認しており、当時135ドル→日本円で1ドル=360円の固定相場制であったことを考えれば、当時48,600円で販売されていたことも判明)


2:lenox、lifetime brandsはいずれも食器などのホーム用品を扱うブランドであり、宝飾品の類の生産を継続するとは考えづらい。


上記のような裏付けのもと、ある程度の信頼性を持って年代の判定ができました。


参考:

 

美しきヴィンテージシルバーカフ

ヴィンテージシルバーバングル

上記の通り、少なくとも44年前、古いものであれば91年前まで時を遡ることができるこちらのヴィンテージシルバーカフは、


何よりもそのシンプルなスタイルが目を惹く逸品となっております。


中央には当時の職人によって丁寧に彫り込まれたモノグラム(刻印)がポイントとなり、全体の印象をキリッと引き締めてくれます。

モノグラムが刻印されたヴィンテージアクセサリー

こちらは力強いフォントが目を惹くヴィンテージシルバーカフです。


ブラックレター(西欧で古くから使用されてきたレタリング)と思われるデザインで、インパクト大の作品に仕上げられております。


この他にも別のデザインのものも手に入れておりますため、計6点限定でのご紹介となります。


肌を露出することが多くなるこれからの季節に、手元で涼しい輝きを放つヴィンテージシルバーカフを、ぜひお試しいただければと思います。


Country Gentleman

Comments


bottom of page