前回の記事からの続きとなりますが、今回はブルックリンの窓の歴史を調べていた際、また興味深いストーリーがいくつか見つかりましたことから、
今回は「ブルックリンの窓に学ぶ知られざる歴史」と題し、窓にまつわる知られざるストーリーをお伝えしたいと思います。
(最近はかなり個人的な趣味に偏った記事ばかりで大変恐縮ですが、もちろん新たなヴィンテージ作品の制作も進めております。そちらも近日中に発表予定となりますので、ご期待いただければ幸いです。)
それでは、早速始めさせていただきます。
※注意点:私は建築に関する知識も経験も全くない人間であり、可能な限り信頼できる情報をお伝えするように心がけておりますが、あくまでも素人の推察、個人的な意見を多分に含んでおりますため、もし修正すべき点等ございましたらご連絡をいただけますと幸いです。
ブルックリンの窓とは
私がニューヨークに滞在していた頃、自分の憧れの場所であったブルックリンの街をあてもなく歩き回っては、「憧れの場所を今歩いているんだ」と言う信じられない喜びに自然と顔がにやけてしまい、
今思えば「金髪の東洋人がニヤニヤしながら歩いている」と気持ち悪がられはしなかっただろうかと気が気ではありませんが、
ブルックリンの街を歩いていると、こんな風景が目に入ります。
ここで一つ質問させていただきたいのですが、これらの写真に共通している要素が一つあります。
それは一体なんでしょうか。
答えは、「窓が縦型である」と言うことです。
日本でいわゆる窓といえば、横に開くタイプのものがほとんどであり、その他にも縦型の窓もあるにはありますが、ブルックリンのような縦に開くタイプのものはあまり見かけません。
それでは一体なぜ、ブルックリンではこのような縦型の窓が用いられるようになったのかを、歴史の変遷とともに調べていきたいと思います。
サッシ窓の「サッシ」とは
どんなものでも調べてみると、やはり興味深い歴史が隠されているものだと今回も思い知らされました。
窓自体の歴史は古く、人類が住居を作り始めた当初は窓とは名ばかりの単なる”穴”が設けられているだけだったそうです。その後徐々に動物の革や油紙などを窓代わりにするようになったとも伝えられています。
(こちらはマサチューセッツ州に1686年に建てられたとされる古い住宅です。19世紀後半に撮影されたものと見られますが、詳細は不明です。やはり窓はSash Windowが採用されていることがわかります)
さて、ブルックリンの住居でよく見られる縦型の窓は、西欧圏においては「Sash Window」と呼ばれており、明確な起源や発明者には諸説ありますが、
主力な説としては17世紀ごろに発明され、徐々に住居の窓として浸透していったと考えられています。
興味深いのが、日本では窓をよく「サッシ窓」などと呼んでいますが、これは日本古来の呼び名などではなく、窓枠を指す"Sash(サッシ)"と言う英語からきている可能性が高いと言うお話です。
さらに調べるとこのSashは、フランス語で「枠組み」を指す言葉「châssis」が語源であると言う説もあり、これによって縦型窓の起源はフランスだとも、その他オランダ、イギリスが始まりだとも言われています。
初期のSash Windowが設置されている建物として有名なのが、イギリスはロンドンにある1610年に建てられた美しいお屋敷、ハムハウスです。
Jonathan Cardy, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
そもそも窓ガラスの起源は古代ローマが有名ですが、現代のような窓のスタイルになったのは17世紀初頭からとされています。(安価なガラスの製造法が確立されるまで、ガラスは富裕層だけが設置できた非常に高価なものでした。)
その後、このスタイルはイギリスのみならずヨーロッパに広く浸透していくことになります。
参考:https://en.wikipedia.org/wiki/Sash_window
ブルックリンの窓が縦型窓である理由
さて、それではなぜブルックリンの窓は縦型がほとんどなのでしょうか。
歴史を遡れば、ニューヨークは元々は1625年にオランダがニューアムステルダムとして、植民地の中心地としたことに始まります。
(1660年に制作された、カステッロ・プランと呼ばれるニューアムステルダムの地図。これは現在のロウアー・マンハッタンにあたる)
※ちなみに、世界の金融センターであるウォール・ストリートも、この頃ニューアムステルダムの北に、ネイティブアメリカンやイギリスの侵入を防ぐべく作られた、「長い壁(オランダ語でdeWaalstraat)」があったことから、ウォール・ストリートと呼ばれるようになったそうです。
(こちらは1916年に書き直されたカステッロ計画。右端に実際の壁が立体的に描かれています。)
(窓と直接関係はありませんが、興味深いストーリーでしたのでご紹介させていただきました。)
その後、このニューアムステルダムをイギリスが奪取し、1664年には後のイギリス国王となるヨーク公の名にちなんで「ニューヨーク」と名付けられました。
3年後の1667年に正式にイギリス領と認められることになりますが、最終的に1783年にはアメリカの領土となり現在に至ります。
さて、このような歴史的背景をもとに、ここからは私の全くの素人目線での推察となりますが、ブルックリンの窓が縦型がほとんどである理由を列挙してみます。
・西欧圏において窓は縦型の方が馴染みがあったため
・入植者を効率的かつ大量に住まわせるために、密集した地域に建物を建てるためには縦型の窓の方がスペースの観点上効率が良かった
・ニューヨークは元々がイギリスが長く所有しており、イギリスの文化がかなり持ち込まれていた
・当時の建築家の好み、流行
少なからず現在のニューヨークもロンドンも、街にある建物の窓を見ると縦型がほとんどとなっていることから、イギリスの影響を受けているように思われます。
これらはあくまでも私個人の勝手な推察ですが、結局のところは「馴染み深かっただけ」かもしれません。
日本でも住居を建てる際に現代的なデザインの家の中にわざわざ和室を作る方が多いですが、そこに特別な理由はなく、単に馴染み深いからなのかもしれません。
実際に日本でSash Windowはあるのか
いくら歴史を調べ、それが格好いいことがわかっていたとしても、実際にそのような窓が日本にあるのかどうかを知らない限り、なんの役にも立ちません。
と言うことで、自分なりに調べたところ以下のような企業で、北米スタイルの縦型の窓を取り扱っていることが判明しましたので、自分の備忘録代わりに掲載しておきたいと思います。
株式会社サンタ通商
クレトイシ株式会社
※上記企業様と当ブランドとはなんの関係性もなく、あくまでも個人的な備忘録として掲載させていただきます。
この記事を書き上げてから街を歩いていると、窓一つで家の印象はガラリと変わってくることがわかってきました。
「神は細部に宿る」とはよく耳にする名言ですが、一つ一つの要素に対して真正面から向き合い、丁寧に理解すると言うことは、時間がかかるため非効率にも思えますが、そういった日々の積み重ねこそが自らを遠くへと連れていってくれるのではないか、と折に触れ感じることが多くなってきました。
これからも小さな一つのブランドとして、何より一人の人間として成長し続けるために、小さな習慣・興味を積み重ねて、怠けがちな自分を少しでも前へと進めていければと思います。
いよいよ梅雨明けとなりますが、皆様くれぐれもお身体ご自愛ください。
Country Gentleman
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