
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Mourning_ring_thinktank.JPG
これまで当ブログでは、スプーンリングにまつわる”結婚”の歴史や、襤褸(ボロ)にまつわる”継承”の歴史など、どこか心が暖かくなるような興味深いストーリーをご紹介してまいりました。
”死”という切り口でヴィンテージアクセサリーを見るとき、そこには恐ろしい歴史と、そして悲しくも暖かいストーリーがあることに気づきます。
今回ご紹介するヴィンテージアクセサリーは「ポイズンリング」と「モーニングリング」です。
死をもたらすポイズンリング

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Gold_ring,_Italian,_16th_century_Wellcome_M0013226.jpg
(こちらは16世紀ごろのイタリアのポイズンリングとなります。蛇にも似たデザインが、少し恐ろしさを感じさせる指輪となっています。)
はじめにご紹介するのは、身につけた人に、もしくはそれ以外の人に死をもたらす恐ろしいポイズンリングというヴィンテージアクセサリーです。
ご覧いただいている通り、デザインとしてリングに付けられた小さな箱や空洞の部分に、粉や液体の毒を仕込むことのできる仕組みが搭載されている、その名の通りの毒の指輪がポイズンリングです。
その歴史は非常に古いとされていますが、その起源には諸説あり古代インドや古代ペルシャ、アジアから生まれたと言われますが、明確な記述は残されていません。
これはあくまで個人的な推測ですが、ポイズンリングそのものは誰にも知られることなく特定の人物を暗殺したり、自らが窮地に陥った際に自ら命を断てるように開発されたものであるため、
そもそもが「隠しておきたい」アクセサリーであったため、明確な起源が判然としない理由ではないかと考えております。
話を戻します。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Gold_ring,_Italian,_14th_c._Wellcome_M0013228.jpg
(こちらは14世紀ごろのイタリアで見つかったポイズンリングです)
ポイズンリングは古代インドや古代ペルシャなどで生まれ、その後徐々にヨーロッパへと伝わっていったとされます。
ポイズンリングそれ自体が人に知られてしまっては使用の際に不都合となるため、それを実際に使用した人はほとんど歴史上に登場しないのですが、
それでも古代ギリシャの弁論家デモステネスや、古代ローマ最強の敵と呼ばれたハンニバルが、このポイズンリングで自ら命を断ったと言われている他、
現代では”悪女”と呼ばれることもある15−16世期の女性ルクレツィア・ボルジアが、ポイズンリングを用いてボルジア家の政敵を毒殺したという噂があります。
参考:https://en.wikipedia.org/wiki/Lucrezia_Borgia
少し話がそれますが、彼女の生まれたイタリアのボルジア家には”カンタレラ”なるボルジア家独自の猛毒があったとされており、もしかするとその”カンタレラ”が彼女のポイズンリングの中には入っていたのかもしれません。