今回ご紹介するのは、初登場となるDominick&Haffが1894年(127年前)に発表した、重厚感あふれる傑作パターン”Renaissance”のフォークから制作された、ヴィンテージフォークバングル”Renaissance”となります。
Dominick&HaffはニューヨークでHenry Blanchard DominickとLeroy B. Haffによって、1872年に設立された銀食器ブランドでした。
高いデザイン力と彫金技術で瞬く間に人気を得ますが、1928年に世界的な銀食器ブランドであるReed&Bartonに売却・吸収された、今はなきブランドの一つとなっています。
(ニューヨークはアッパーイーストサイドにある美術館、Cooper Hewitt, Smithsonian Design Museumの美しいコレクションの一つ。Dominick&Haffが得意とした”打ち出し”と呼ばれる技法で立体感を持たせた葉が印象的な作品。1888年の作品)
ちなみに彼らの生み出した素晴らしい銀食器たちはその芸術性の高さが評価され、現代でもメトロポリタン美術館やブルックリン美術館などに収蔵されています。
(カリフォルニア州サンフランシスコのDe Young Museumで展示された際の、Dominick&Haff製のポット。1879年に制作され、銀だけでなく真鍮や銅などのさまざまな素材の美しさが引き立てられた傑作。)
こちらのフォークのパターン”Renaissance”とはフランス語で「再生」(re- 再び + naissance 誕生)を意味し、これは古典古代(ギリシャ・ローマ)の文化を復活させようとした、文化運動を表す言葉です。
1800年代末期の作品ということもあり、非常に豪華絢爛で上から下、表から裏まで一切の妥協無く細やかな装飾がそこかしこに詰め込まれています。
特徴的なのが持ち手中ほどと、指す部分の裏側に配置されている”顔”のデザインです。
この顔の持ち主は判然としていませんが、実は同時期(1800年代)に発表されたデザインの中には、顔がデザインされることが多かったことから、
当時のこのような”顔”をデザインすることがトレンドの一つであった可能性が考えられます。
代表的なものとしてはTiffany&Coの"Grecian"(1880)や、Roger Brothersの"Assyrian Head"(1847)、Meriden Britannia Companyの"Assyrian Head"(1887年)など、
デザインの類似性において枚挙にいとまがないほど、19世紀後半にかけて流行した形跡が見られます。
現代においては、シンプルかつ使い勝手ばかりを重視した食器が多い中で、その高価さから当時は富裕層や貴族しか所有することができなかった銀食器に対して、
彼らがステータスシンボルとして、あるいは富の象徴としてこのような芸術的価値を付与したことは、非常に興味深いことです。
こちらのヴィンテージフォークバングルの重さは約44gと、かなりの重量感があります。
年代的に考えると、このように世界大戦など大きな戦争の前に作られたものは、素材を贅沢に使用することが比較的容易だったため、全体的にしっかりとした厚みがあり、どの角度から見てもその存在感を味わうことができます。
日本での流通量は極端に少なく、ほとんど人と被ることのない特別なヴィンテージアクセサリーとなります。
さらにその特別さを際立たせてくれるのが、持ち手の表裏にそれぞれ刻み込まれた”モノグラム”の存在です。
18〜19世紀当時の銀食器所有者(つまり富裕層や貴族)の中では、高価な銀食器に対して自らの名前や家紋などを、彫金師に依頼して彫り込ませることが流行しており、それらは総じて”モノグラム”と呼ばれます。
こちらのヴィンテージフォークには表面に”S”、裏面に"1900"と刻まれており、おそらくは当時の所有者が”1900年のイニシャルSの富裕層・貴族”であったことが推察されます。
デザイン・重量・年代判別・モノグラムなど、どれをとっても味わい深いこのヴィンテージフォークバングルを、ぜひこの機会にお試しいただければと思います。
こちらの作品は2本限定となりますので、お早めのご検討をお勧め致します。
Country Gentleman
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