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銀食器の知られざる歴史

更新日:2021年9月20日


スプーンなどの銀食器の画像

古くは1870年から1920年にヨーロッパを中心に栄華を誇った銀食器業界。

私カントリージェントルマンは、そんな銀食器を素材としたヴィンテージアクセサリーを制作し、販売しております。

その中で様々な銀食器に触れ、その歴史について調べを進めてきました。

今回はそんな経験や知識をもとに、銀食器の歴史について紐解いていきたいと思います。

ヴィンテージバターナイフを素材とした希少なブレスレット
 

銀食器の素材:スターリングシルバーの歴史

スターリングシルバーの銀食器

銀食器は、その名の通り銀で作られた食器を指します。

古くから、銀は多くの異なる名前で呼ばれてきましたが、現在最も使用される 「スターリングシルバー」という言葉の「スターリング」はどのようにつけられたのでしょうか。話は12世紀にまでさかのぼります。

牛を購入する際の支払いとして、ドイツ東部の人々はイギリス人に「Easterlings(イースターリング)」と呼ばれる銀貨で支払いを行いました。

その結果、「Easterlings(イースターリング)」は英国通貨の基準として広く受け入れられました。 この名前が時を経て略されていったものが現代の「Sterlings(スターリング)」となったといわれています。

 

銀食器の素材:スターリングシルバーの特徴

スターリングシルバーの作品

すべての貴金属の中でも、スターリングシルバーとよばれる純度92.5%の銀は、その燦然たる輝きとさまざまな用途への汎用性とで、何世紀にもわたって人々の生活に利益をもたらしてくれました。

純銀は非常に柔軟で加工のしやすい金属の1つです。実際に、融点は961.8℃と金のそれよりも低く、ハンマーなどでたたくことで様々な形に容易に変形します。

そのため、現代でもジュエリーや銀食器、またその価値の高さから銀のインゴッド(銀塊)として、使用されています。

ジュエリーなどを購入する際に、よく指標のひとつとして用いられる「スターリングシルバー」という名称は、そのものに92.5%の純銀が含まれていることを示しています。

残りの7.5%は、他の金属合金、最も多くの場合銅で構成されています。92.5%よりも、100%の銀含有量が望ましいと思われるかもしれませんが、実際にはそうではありません。

92.5%を超える銀を含む金属合金はでこぼこや傷に弱く、なにより柔軟性が高すぎるために変形してしまう恐れがあるのです。

ジュエリーや銀食器として銀を使用するためには、銅などの第2の金属と混ぜ合わせることによって安定性と弾力性を確保する必要があるのです。

 

銀食器の素材:健康と銀の関係

抗菌剤・殺菌剤としての銀

また、銀は何千年もの間、世界中の文明によって抗菌剤として使われてきました。その医学的、保存的および回復力は、古代ギリシャとローマ帝国まで遡ります。

銀は現代の医薬品が開発されるよりもはるか前に、殺菌剤と抗生物質としても使用されていたのです。

たとえば、ギリシャ人は、水や他の液体を新鮮に保つために銀製の器を使いましたし、ローマ帝国では腐敗を防ぐために銀の壷にワインを保管していました。

また古代エジプトの書物にも銀がさまざまな面で使用されていたことが記載されており、中世では、銀製品は疫病のから富裕層を守ったことが書いてありますし、実は現代の殺菌剤や抗生物質の出現前に、病原菌が銀の存在下で生存できないことが知られていました。その結果、食器類、飲料容器、食器類に銀が使用されていったのです。

さらにいえば、銀は毒によって変色することも知られていたため、中国の皇帝は銀の箸で食事をしていました。 西洋でももちろん銀は重宝されており、オーストラリアやアメリカの入植者たちは、飲料水の樽やタンクに銀のコインなどの銀製品を入れることで、バクテリアや藻類の繫殖を抑え安全な水を確保していました。

また戦争中にも銀は利用されていました。銀箔がそれにあたり、第一次世界大戦中には創傷の感染症から身を守るために使用されました。

抗生物質の導入に先立って、コロイド銀と呼ばれる物質も病院などで広く利用され、少なくとも1200年は殺菌剤として使用されました。さらに1800年代初期には、傷の縫合に銀製の糸が用いられることもありました。それによる経過はいずれも良好だったようです。

 

スターリングシルバーウェア(銀食器)の歴史

古代のお城

もしあなたが西欧諸国での正式なディナーパーティーに参加したことがあるなら、きっとそこにはたくさんのスターリングシルバーで作られた銀食器を目にしたことと思います。

洗練された輝きと、そこに施された美しい彫刻によって作られた銀食器はどんな普通の食事をも特別なイベントに変える力を持っています。

今日では特別なパーティーなどで使用される程度で、その使用頻度は低くなってきているものの、それまで銀食器は歴史的にも多くの役割を果たしていました。

高級レストランでの銀食器の使用は、1840年から1940年の間に最も多くみられ、1870年から1920年の間に最盛期を迎えました。そのため、銀の生産と商品化は、ますます増加する需要に対応するために大幅に進んでいきました。

またビクトリア朝の時代には、食器を使わずに食べ物に触れたり食べ物を扱うことを良しとしませんでした。これにはもちろん衛生的な意味だけではなく、文化の高度化や裕福さをあらわすための道具としてよく用いられました。

その証拠に、非常に裕福な世帯だけが銀食器を揃えることができました。不思議な話だと思うかもしれませんが、昔は人々が自分の食器を持ち歩くのはごく一般的なことでした。 ホテルでさえ食器を備えていない場合も多く見られ、そのため旅行者は自分で食器を持ち歩き食事の際に用いたそうです。

上質な食卓の究極の基準は、スターリングシルバーの銀食器でした。これは、特にアメリカとヨーロッパで正式な食事のテーブルをセッティングする際には必要不可欠なものです。

銀食器のコレクションは非常に大規模なもので、100個を超えることがしばしばあったそうです。

そのなかには、大きなフォークやケーキナイフ、スープスプーン、など非常にさまざまな種類が作られていきました。

その美しい輝きに加えて、スターリングシルバーの安定性は、食べ物を切断して提供するのにとても役立つ道具でした。

銀食器の進化はまだまだ続きます。スターリングシルバーのナプキンリング、コースター、精巧なつくりの銀の燭台などの装飾品が、テーブルを彩るアクセントとして開発されていきました。

食事の後には、ポットやリキュールのゴブレット、ミントジュレップのカップなどさまざまな銀食器が作られ、そのいずれもが人気を博しました。

 

銀食器の衰退

衰退の歴史

非常に高い人気を誇った銀食器でしたが、その人気ゆえ銀のコストが上昇したため高級レストランなどでの銀食器の流行は、1900年代半ばにやや減りました。

また、文化的にも近代ではより速いペースで食事が行われるようになりました。そのためかつてはベーシックであったコース料理のディナーは、上層階級の間でも非常に特別な行事のみとなっていきました。

さらに銀食器はその他金属で作られた食器よりも、洗浄に時間と手間がかかることもありディナーテーブルでの人気の低下へとつながっていきました。

 

銀食器の現在

カントリージェントルマンのリメイク作品

今日では、ビクトリア時代などの銀食器の最盛期時代のように広く使われているわけではありませんが、銀食器を日々の生活に取り入れている人は少なくありません。

オードブルを銀の皿にのせたり、豪華な銀のカップにコーヒーのための砂糖とクリームを入れたりと、スターリングシルバーの銀食器はありふれた日常をその輝きで照らしてくれます。 また、豪華な結婚式や赤ちゃんへの贈り物としても未だに重宝されています。

そんな銀食器の輝ける歴史を受け継いでいくべく、カントリージェントルマンでは銀食器をリメイクし、スプーンリングやバターナイフブレスレットなど、独自の作品を制作・販売しております。

銀食器の代表格、スプーンから制作されたスプーンリング

裏側にはWallace sterlingの刻印が

カントリージェントルマンではそんな歴史のある銀食器というものにとても魅力を感じ、作品の素材としてリングやブレスレット、ネックレスや髪留めに使用し、新しい命を日々吹き込んでいます。

こちらはBerainと呼ばれるパターンの、ヴィンテージシルバーカトラリーから制作したヴィンテージフォークバングルです。

ヴィンテージフォークバングル メンズ

細やかな装飾と、プレーンな部分が非常に美しい対比を生み、特別なヴィンテージアクセサリーへと生まれ変わりました。


銀食器は現代においては、単なる銀の素材として溶かされ、銀塊へと変えられてしまうことも珍しくはありません。


しかし銀食器には単なる銀の塊としてではなく、歴史を経ることで身に纏ってきた特別な雰囲気と、そしてストーリーとがあります。

そして、古き時代に競うように豪華さを求めてデザインされていった彫刻の美しさ。それとは対極的にスターリングシルバーの美しさを前面に押し出したシンプルなデザイン。


銀食器にはさまざまな美しさを見ることができます。

ヴィンテージの銀食器を手に取り、その一つ一つにこめられた歴史と美しさを表現するために、 カントリージェントルマンはこれからもヴィンテージアクセサリー作りをしていきます。

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