これまでにいくつものヴィンテージアクセサリーに関する歴史をご紹介してきましたが、
様々なアクセサリーの歴史を調べていくと、実はそれらがかなりの割合で古代ローマ時代には存在していたことに気づきます。
詳しくは改めて調べてみないとわかりませんが、個人的には現代におけるほとんど全てのアクセサリー(リング・ネックレス・バングルなど)の原型は、
この古代ローマ時代には完成していたのではなかろうかと思ってもいます。
さて、今回はそんな現代のアクセサリーの原型が数多く登場する、古代ローマのアンティークアクセサリー(お守り)をご紹介して参りますが、
特に今回は”子供”のアクセサリーに焦点を当てて、お話しさせていただきます。
古代ローマとは
古代ローマの始まりは紀元前753年(伝説上)とされ、その後5、6世紀ごろまで続いた国です。
イタリア半島の中部から、地中海全域にまで勢力を拡大した古代ローマでは、様々な文化が花開きました。
その中でもこの時代は多くの偉大な哲学者が名を馳せ、「哲人皇帝」で名高い第16代ローマ皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌスも、この頃の人物です。
参考:古代ローマ
古代ローマ時代の寿命
当然ながら、この頃は医学が未発達であったためほとんどのローマ人は短命でした。
一説によれば古代ローマ人の寿命は20-25才程度であり、さらに出生時に15-35%が亡くなってしまったとされるほどでした。
実は今回のアンティークアクセサリーは、そんなローマ人の短い寿命・低い出生率に深い関係があります。
参考:ローマ帝国の人口学
ブラとルヌラ
古代ローマの子供は、あるお守りを身に付けていました。それが”ブラ”と”ルヌラ”と呼ばれるアクセサリーでした。
男の子は”ブラ”と呼ばれるロケットペンダントのようなもの、
女の子は”ルヌラ”と呼ばれる三日月型のペンダントを身に付けていました。
※(全く関係はないかとも思いますが、この”三日月形”とされるルヌラが、私にはネイティブアメリカンの”ナジャ”に見えて仕方ありません。
ナジャは女性の子宮を模して作られたとされており、このルヌラが”女の子”に身につけさせられた点から考えても、その関係性(デザイナーのイメージ)には、不思議な共通点を感じてしまうのです。)
この時代では悪霊や精霊が信じられており、また先に述べたように乳幼児の生存率が低かったことなどから、このようなアクセサリー(お守り)を身に付けさせることで、
そう言ったネガティブなものから我が子を守ろうという意味合いが含まれていたようです。
特にブラの中には子供を守るためのお守りが入れられるようになっており、
素材として裕福な親は金でできた高級なブラを、そうでない親たちは革や布などでできたものを子供に身につけさせました。
デザインとしてはシンプルなものから、非常に凝った装飾が施されたものまで様々なものが発見されています。
※職人の手でギリシャ神話に登場するイカロスが彫刻された貴重な黄金のブラ
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Etruscan_-_Bulla_with_Daedalus_and_Icarus_-_Walters_57371_-_Side_A.jpg
ファッションではなくお守りとしてのアクセサリー
※ローマの子供がブラを身につけていたことが示されている、貴重な彫刻
現代においてアクセサリーはほとんどがファッションの一つとして身につけられていますが、実は歴史を遡れば、そこにはお守りの意味が含まれていることが非常に多いことがわかります。
例えば戦争時に流行したアクセサリーの一つとして上げられるのがロケットペンダントです。
戦争にいく兵士たち、そしてその恋人や家族はお守りとしてこのロケットペンダントを身につけていました。
しかし実はロケットペンダント時代ははるか戦前から存在しており、その当初からロケットペンダントの中には「悪霊から身を守るためのお守り」を入れることができるようになっていました。
また、機構の面から見ても「中が空洞で、写真やお守りなどを入れられる」ようになっており、ブラに非常に酷似していることがわかります。
さらにアクセサリーが持つ意味合いとして、「大切な人をネガティブなものから守る」という点から、非常に似通ったものを感じます。
何よりも私が感じたのは、親が子を想う気持ち、我が子を苦難から守ってあげたいという慈愛の精神は、現代でもなんら変わらない不変のものであるということでした。
掌に隠れるほどのこの小さなお守りの中には、そんないつの時代も変わらない愛情が込められています。
当カントリージェントルマンでは、このように素敵な歴史・ストーリーを持つヴィンテージ素材から、新たなヴィンテージアクセサリーを制作しております。
もし「歴史」「ストーリー」があるヴィンテージアクセサリーにご興味がおありの方には、きっとお気に召していただけるような作品を見つけていただけるのではないかと思います。
お時間がありました際には、是非ご覧をいただければ幸いです。
Country Gentleman
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