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今回は、折に触れご紹介をしているヴィンテージ・アンティークアクセサリーからは少し趣向を変えて、
”ネッカチーフ”と呼ばれるネックウェアについて、お話しさせていただきます。
ハンカチ、バンダナ、スカーフと、首に巻くものは数あれど、あまりこのネッカチーフについて詳しくご存知の方は少ないのではないでしょうか。
そんなネッカチーフについて、知られざる歴史を紐解いていきたいと思います。
※ネッカチーフ 巻き方・結び方についてはこちらの記事をご覧ください。
ネッカチーフとは
特にイタリアを中心に、多くの大人のファッショニスタに愛されるアイテムが、ネッカチーフです。
ネッカチーフとバンダナ・スカーフの違いは、大きく2つあります。
まず一つ目はその形です。
バンダナは正方形、スカーフは長方形であるのに対し、ネッカチーフは三角形もしくはダイヤ型の形をしていることが多いネックウェアです。(もちろん正方形のものも多く存在しています。)
バンダナを首に巻く際、丸めてから首に巻きつけるかと思いますが、正方形を丸めているため布の厚みから首元に余計なボリューム感が出てしまいます。
しかしネッカチーフは三角形(つまり正方形の2分の1)やダイヤ型となっていることが多く、細く丸めやすく余計なボリューム感が出ないため、すっきりと首元を彩ることができるのです。
このため、現在では多くのファッショニスタたちに愛用され、Tシャツやワイシャツの間にワンポイントとして取り入れることが多くなっている、今注目を集めているネックウェアの一つになったのです。
そして2つ目の違いが、その実用性です。
ネッカチーフは制服の一部として使用されることが多く、どの組織に属しているのかを示す手段の一つとしても用いられることが多いものです。
これは後述しますが、現在でもネッカチーフが使われている場所があります。それはアメリカ海軍とボーイスカウトです。
彼らは自らの規律と勤勉さを示すために、制服の一部にこのネッカチーフを採用しています。そしてそれは時に止血帯になり、骨折した際の添木を固定するための包帯がわりにもなるのです。
ネッカチーフの始まり
それでは、このネッカチーフはどのようなきっかけで誕生したのでしょうか。一説によればネッカチーフは16世紀頃に誕生し、当時の船乗りが着ていた服で首元が擦れないように首元に巻かれたのが始まりとされています。
それがどのようにしてアメリカ海軍の制服として採用されることになったのでしょうか。
ネッカチーフがアメリカ海軍の歴史に登場するのは、アメリカ海軍の前身である大陸海軍(1775年10月13日に設置)の設立当初からです。
これは海賊や船乗りが頭にハンカチやバンダナを巻いており、それがいつしか首元を飾るようになった流れからと考えられます。
アメリカ海軍のネッカチーフのルール
アメリカ海軍の制服が正式に規定されたのは1817年のこと。
この年にアメリカ海軍の制服が正式に規定され、その際にネッカチーフにもあるルールが適用されることになりました。(実際のところ、当時の海軍は潤沢な資金があったわけではなく、全員が制服を着ることはできなかったようです。)
この1817年に定められたルールが「色は黒であること」、そして「結び目は四角であること」でした。
色が黒であることは、着用し続けることによって付着する汚れが目立たないようにとの理由からですが、
結び目が四角であること、というルールは一見少しおかしな感じもします。
実はこの結び方は、元々は船の上で荷物を結ぶ際に用いられていたので、受け入れられやすかったことがその理由の一つとして挙げられます。(実際の結び方は以下の画像もしくは動画をご覧ください)
また、正式に結び方を統一することで、船員たちの規律を正せると海軍が考えたため、という理由もあります。
さらにこれは私の推測ですが、一度この結び方を試してみるとそれ以上は決して締まらないことがわかります。これはネッカチーフが何かに引っかかってしまった際でも、首が締まってしまうことを防ぐという効果もあるのではないかと推測されます。
こちらの動画では、実際に彼らがどの様にネッカチーフを手入れし、そして結んでいるかが非常にわかりやすく、かつ詳しく紹介されています。
ご興味がおありになる方は、是非一度ご覧ください。
いずれとしてもこれらの背景とその実用性の高さから、ネッカチーフは現在のアメリカ海軍にも受け継がれ、一つのシンボルとして兵士の胸元を飾っています。
もう一つのネッカチーフ:ボーイスカウト
ネッカチーフといえば、ボーイスカウトの歴史を忘れるわけにはいきません。
日本でも多くのボーイスカウトの支部があり、全世界に4,000万人もの団員が所属しています。
そもそもボーイスカウトの始まりは、イギリス陸軍の士官として国民的英雄となった、ロバート・ベーデン・パウエル卿が1907年にイングランド南部の沖合にあるブラウンシー島で行った小さなキャンプがきっかけとされています。
以前から少年たちの教育に対して関心を寄せていた彼は、彼のこれまでの経験を基に少年たちに自立心や協調性・リーダーシップの素養を伸ばすために、このキャンプを行いました。
ボーイスカウトに所属した著名人は枚挙にいとまが無く、元アメリカ合衆国大統領のジョン・F・ケネディ、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ、「インディ・ジョーンズ」や「ジュラシック・パーク」で知られる映画監督のスティーヴン・スピルバーグなどが名を連ねています。
ボーイスカウトのネッカチーフの始まり
彼らが首に巻いているのはネッカチーフですが、アメリカ海軍のそれとは全く異なっており、団ごとの様々な色や刺繍・プリントが施されているほか、形は三角形であることなどが違いとしてあります。
ボーイスカウトのネッカチーフの起源は、西部開拓時代のカウボーイとする説もありますが、バーデン・パウエルが書いた本の中では、当時彼が指揮していた「部下の格好によく似ているスタイル」であるとしています。
いずれとしてもこのネッカチーフは、非常時には包帯がわりにもなる実用性を兼ね備えており、ボーイスカウトのスタイルに欠かせないアイテムの一つとして認識されています。
Woggleとは何か
みなさんはWoggleという、革やプラスチック、時には金属でできた不思議なリングのようなものをご存知でしょうか。
これはWoggle(ワグル)と言って、ネッカチーフを結ばずにまとめておくために開発されたものです。
ボーイスカウト初期の頃には、ネッカチーフは結び目を作って留められていました。しかし若いイギリスのスカウトであるビル・シャンクリーが、アメリカで既に何人かが自らのためにネッカチーフ用のリングを作っていることを聞きつけ、
正式にWoggle(ワグル)として開発・採用されたことが始まりとされます。具体的には1923年6月版のスカウト誌(イギリスのスカウト教会が隔月で発行する雑誌)で言及したのが初めてです。
※ちなみにアメリカでは「スライド」や「スリップオン」とも呼ばれています。
これにより、ネッカチーフを結ぶことによって生じるシワや汚れ、そして結び目や端があらぬ方向にむいてしまうことを防ぎ、ボーイスカウトたちにより清廉な印象を与えることに成功したのです。
ちなみにこのワグルは様々な素材・デザインで作られており、自らの個性を表現できる唯一のアイテムとして、様々なスタイルのワグルが作られています。
例えばこのように革を編み込んだワグル。
こちらは細い竹からオリジナルのワグルを作っている様子。
この他にも動物の骨や、様々な金属製のもの、紐や木で作られたワグルが存在しています。
こだわりのヴィンテージネッカチーフ
当カントリージェントルマンでは、このように味わい深いネッカチーフの歴史を踏襲し、素材・製法にこだわり尽くした世界に一つだけの<ヴィンテージボロネッカチーフ>を制作しました。
使用する素材は全てヴィンテージにこだわり、ヴィンテージバンダナ、アメリカの古い小麦粉袋の布、明治〜昭和初期のボロを使用。
ワグルにもこだわり、1960年代に発表されたデザインのスターリングシルバー製ヴィンテージフォークを丸めたワグルを制作しました。
巻いても結んでも、ワグルで留めてもよしの、万能なファッションアイテムとなりました。
ヴィンテージボロネッカチーフの詳細はこちらからご覧いただけます。
ぜひこの機会にお試しいただければと思います。
ネッカチーフの魅力
このように、ネッカチーフには独特な背景・成り立ちがあります。
この深い歴史、時代背景を現代の人が皆知っているかどうかはわかりませんが、現在ではよりファッショナブルな役割を担うことになったネッカチーフは、世界中のファッショニスタたちを虜にしています。
(実はこの記事を執筆していた際に、アメリカのボーイスカウトでは虐待に関する問題が明るみになり、破産申請も進められているとのニュースを読みました。
今回お伝えしたように、ボーイスカウトの元々の精神は”健全な心と体を持つ少年を育てたい”という、ロバート・ベーデン・パウエル卿の純粋な志から始まっていたはずです。
今回のことはあってはならないことであり、またパウエル卿の純粋な志を汚す行為に他なりません。被害者の方が負ったであろう大きな心の傷を悲しむとともに、改めて”健全な心と体を育てる”ためには何をすべきなのか、彼らが考えるべき、そしてこれからなすべきことは山積していると言えます。)
Country Gentleman
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