top of page

ラブスプーンの知られざる愛の歴史

更新日:2020年12月16日

当カントリージェントルマンでは、ヴィンテージ素材が持つ歴史やストーリーに深い魅力を感じ、ヴィンテージの銀食器からスプーンリングフォークバングル、バターナイフバングルなど様々なアクセサリーを制作してきました。


そして同じように、知られざる歴史を持つヴィンテージ素材のストーリーを紐解きながら、これまでに様々なヴィンテージアクセサリーをご紹介させていただいてきました。


その中でもスプーンリングの歴史については個人的に思い入れがあり、継続して様々な角度から調べておりましたところ、


「ラブスプーン」と呼ばれるモノの味わい深い歴史に触れる機会がありました。


今回は「スプーン」にまつわる、もう一つの愛の歴史についてご紹介させていただければと思います。

 

そもそもスプーンリングとは

Mediciパターンのスプーンリング

詳しくは別記事「スプーンリングの歴史」をご覧いただければと思いますが、一説によればスプーンリングは17世紀ごろのイギリスから始まったとされており、その名の通りスプーンを丸めて作られたリングを指します。


中世イングランドの伝説上の人物、ロビンフッドが愛する女性にこのリングを贈ったという話もありますが、そもそもロビンフッドの伝承が多い時期としては13〜14世紀ごろからが多く、あまり正確な話とは言えないようです。


さて、このスプーンリングが始まったのは、その昔裕福な貴族・富裕層に仕える貧乏な召使いが、愛する人への婚約指輪を贈るため


主人の屋敷から高価な銀食器を盗み出しそれを職人に丸めさせてスプーンリングにして贈ったことが始まりとされています。


※カントリージェントルマンのスプーンリングはこちらからご覧いただけます。


ここまでは以前にもご紹介した通りですし、日本においても少しずつその認識が進んできたのではないかと思われますが、私はここでさらに「なぜそれがスプーンだったのか」について、疑問を持ちました。


そしてまた違った角度からこのストーリーについて調べを進めていると、新たな知られざる歴史を持つモノと出会いました。それこそが今回ご紹介する「ラブスプーン」です。

 

ラブスプーンとは


ラブスプーンとは、17世紀以前から始まったとされる手作りの木製スプーンのことを指します。


(ウェールズ最古のラブスプーンはセントファガンズ国立歴史博物館に展示されている1667年のものですが、実はこの伝承はそれよりも以前から存在していたとされています。)


そのストーリーとはこのようなものです。


愛する人への求婚の際、男性は自らの空き時間(冬の長い夜の間や、船乗りは船に乗っている間)に1本の木をスプーンにするべく、コツコツと彫刻していきました。


その木を彫っている間、彼は常に愛する女性のことを想っていました。これから始まる2人の幸せな人生のことを想像しながら、自らが作った木のスプーンを喜んで受け取ってもらえるように丁寧に丁寧に作業を進めていきました。


そしてようやく1本の美しいスプーンが出来上がると、彼はそれを結婚したい女性に贈りました。彼女は喜んでそのスプーンを受け取り、ふたりは晴れて幸せな夫婦となりました。


これがラブスプーンの始まりであったとされています。

19世紀初め頃の木製のラブスプーン

※写真はBirmingham Museum and Art Galleryに所蔵されているラブスプーン。非常に細かい作りが手作りであるということを忘れさせてしまうほどの、高いクオリティとなっています。1800-1850年頃のものです。


この文化はイギリスのウェールズで広く知られており、それから数百年が経過した現在では土産物としても盛んに作られています。

 

ラブスプーンの優れたデザイン


ラブスプーンは単なる実用的な食器としてではなく、あくまでも装飾的な贈り物として贈られることがほとんどであったとされています。(事実ほとんどのラブスプーンは壁に飾られていました。

十字架やケルティックノットが美しい

そのデザインは非常に多種多様であり、基本的には愛する人に対して自分が提供できるものや伝えたいメッセージなどが、様々な形のシンボルへと落とし込まれていました。


以下がそのデザインの一例になります。

この他にも車輪や十字架、船乗りたちが好んで使ったシンボルとして錨(いかり)などがあります。


このように、とても細かい細工が施された木製のスプーンは、強度や実用的な面から実際に使われることは少なく、専ら壁に飾られていました。


さらにこの文化はウェールズだけではなく、その他のヨーロッパ諸国でも見られており、特にノルウェーで発見された2本のスプーンがチェーンで繋がったデザインのラブスプーンからは、

木のチェーンで繋がれた2つのスプーン

非常に細かい装飾と高い技術を感じることができます。(実際にこのスプーンで夫婦が食事を取ることで、愛情を深めるという意味合いも持っていたようです。)


※参考までに、実際のラブスプーンの制作方法を初心者向けに紹介してくれている動画がありましたので、お時間のある際にご覧ください。

このように、この1本の木製の食器にはここまでの奥深いストーリーがあることがわかります。


一見何の関係もないように思われる「スプーンリング 」と「ラブスプーン」ですが、愛する人への贈り物であり、手作りであり、17世紀のイギリスで流行したという、いくつもの奇妙な共通点があることがわかります。


おそらく直接的な関係はないかと思いますが、それでもこのような歴史の共通点を発見していくことは、とても楽しいものです。

 

スプーンへの並々ならぬ愛情


なぜそれが”スプーン”であるのかは疑問が残るところではありますが、イギリスでは古くからスプーンに様々な意味合いを持たせてきました。


例えば宗教的な意味合い。イギリスでは古くから子供の洗礼の際に贈り物をする風習があるのですが、特に富裕層の間でその際に送られたのが、12使徒が象られた銀のスプーンでした。

12使徒の1人であるセントジェームズの銀食器

十二使徒の一人であり、殉教した最初の使徒とされるセント・ジェームズ・アポストルをモチーフとした銀のスプーン。非常に緻密なデザインが目を引きます。


また、「銀の匙をくわえて生まれてくる」とはここ日本でもご存知の方が多いと思いますが、これもイギリスのことわざの一つです。


この他にもスプーン、こと銀食器は様々な利用方法・意味合いがあったとされますが、特に”銀食器”に関してそのうちいくつかをご紹介したいと思います。

このようにスプーンは彼らの人生において大きな意味合いを持つものであったことから、このような文化が生まれ・育まれていったのではないかと考えられます。

 

愛する人への手作りの贈り物


先述の通りスプーンリングとラブスプーンには様々な共通点があったものの、その中でも私が一番心を引かれたのが、


愛する人へ手作りの贈り物を贈る」という、その心温まる歴史です。


大量生産・大量消費の工業的な製品が大多数である現代において、愛する人へ手作りの贈り物を贈るという機会は、昔から比べるとはるかに少なくなってきています。


受け取ってくれることを願って手作りの贈り物を作り、手渡す。その一連のプロセスが、私には何よりもロマンティックなものに思えるのです。


カントリージェントルマンではこの歴史を尊重し、ヴィンテージの銀食器からスプーンリングを制作・通販しております。

Gorhamのスプーンリング

wallaceのヴィンテージスプーンリング

私は、ヴィンテージアクセサリーを身に付けることは、その素材が持つこの奥深い歴史を身に纏うことと同義と捉えており、


時を経ることにより付いた小さな傷や汚れ、その中で得られたであろう独特のオーラにこそ、魅力があると考えております。


特別なアクセサリーをお求めの方にこそ、身に付けていただきたい作品をご用意しておりますので、もしお時間が許す際には、一度ご覧いただければ幸いです。



Country Gentleman


bottom of page