清廉潔白な心に、強靭な肉体。そして大切な人を守る騎士のような強さと”自分”という芯を持った人、【紳士】。
そんな紳士のためのスポーツとして、古くから知られているのが【ラグビー】です。
イギリスでは昔からこのような名言があります。
”football is a game for gentlemen played by hooligans, and rugby union is a game for hooligans played by gentlemen”
これを訳すと、”フットボール(サッカー)はフーリガンがプレイする紳士向けのゲームであり、ラグビーユニオンは紳士がプレイするフーリガン向けのゲームである”となります。
ではラグビーが紳士のスポーツであるとされる、その知られざる歴史を紐解いていこうと思います。
ラグビーの起源
ラグビーのそもそもの起源は、2000年以上前まで遡ることができると言われています。(詳細な記録はありませんが、おそらく紀元前5世紀まで遡れると推測されます)
古代ローマ時代にプレイされていたスポーツ、【harpastum(ハーパスタム)】がその起源です。
https://en.wikipedia.org/wiki/Harpastum
このハーパスタムでは、ソフトボール程度の小さなボールをいかに長く自陣に留めておけるかというルールだったそうです。
実際に再現した動画がありますので、こちらをご覧ください。
そもそもこの【harpastum(ハーパスタム)】の語源が「つかむ、ひったくる」という意味合いであったことからも分かるように、
かなり激しくボールの奪い合いをしていたため、当時は手足の骨を折ったり折られたりする事が珍しくなかったという事が記録されています。
偶然から生まれたラグビー
ラグビーが「ラグビー」という名前でこの世に誕生したきっかけは、紳士の国イギリスにあります。
https://www.rugbyschool.co.uk/about/history/a-history-of-rugby-football/
1823年、イングランド中部の州ウォリックシャーのラグビーにある、イングランドで最も有名かつ最も古いパブリックスクール(名門私立学校)の1つであるラグビー校で、ラグビーは誕生しました。
余談ですが、紳士のための大学であるオックスフォード大学やケンブリッジ大学などに進学する上で、進学校に入学する事が最短の近道ですが、
このラグビー校はその中でも最難関進学校として知られる名門中の名門です。不思議の国のアリスの作者であるLewis Carroll(ルイス・キャロル)も在籍していました。
さて、本題に戻ります。
近代ラグビーの起源は、ラグビー校に在籍していた16歳の少年、William Webb Ellis(ウィリアム・ウェッブ・エリス)が、当時足を使ってプレイされていたFootball(フットボール)のボールを、
ルールを間違え手で持って走って、相手側のエンドラインまで運んでしまったことから始まったとされています。
(この辺りに関しては、諸説あります。)
ラグビーが紳士のスポーツたる所以(ゆえん)
ではラグビーが紳士のスポーツであるとされる、その理由は一体どこにあったのでしょうか。
https://www.rugbyschool.co.uk/about/history/a-history-of-rugby-football/
そもそもラグビー校などの最難関の進学校に入学する生徒には、貴族や富裕層などのいわゆる上流階級位の家の子供達が多く含まれていました。
上流階級の学校というと、いかにも贅沢な学校生活を送っていそうなイメージですが実際はそんなことはなく、
親元から離れて暮らす寮生活、質素な食事、ハイレベルな勉強が求められる、とても厳しい環境での学びを課されていたのでした。
そんな中ラグビーという激しいスポーツをプレイさせることで、子供達は自ずと「フェアプレイ」、「マナー」、「規律」、「チームプレイ」、そして「強靭な肉体と精神」を養う事ができました。
ラグビーをプレイする事で得られるこれらの教養、そして要素が、その後の彼らを紳士たらしめていくことになった、というわけなのです。
ラグビーとサッカーの違い
元々はラグビーもサッカーも、フットボールと呼ばれる名称で知られる一つのスポーツでしたが、先にお話ししたような経緯をたどり、徐々に地方によってルールが違って来ることになりました。
すると学校対抗の試合をする上で「ルールが違うのはおかしい!」という話となり、1863年に各学校の卒業生たちが話し合い、一旦ルールは統一されかけますが、
荒々しい行為(すねを蹴ったりする行為)やボールを手で保持する事を禁ずるとするルールがどうしても受け入れられない卒業生たちが、
1871年にフットボール協会から脱退しラグビーの協会を新たに作ったことで、ようやくフットボールとラグビーは別れて認識されることとなりました。
サッカーの人気、ラグビーとの差
そもそもサッカーも、19世紀ごろのイギリスでは紳士階級の嗜むスポーツとして愛されていましたが、ラグビーよりもシンプルなルールとプレイのしやすさで、労働階級の中でもその人気が高まっていきました。
さらに当時のイギリスは軍事的にも強大な国であり、その植民地であった国々(ニュージーランド・オーストラリア・南アフリカなど)でも、イギリス人たちがサッカーをプレイしたことがきっかけで、サッカーの人気は全世界に広がっていきました。
http://publications.worldrugby.org/yearinreview2018/en/56-1
その結果、ラグビーの世界の競技人口は約960万人であるのに対し、サッカーの世界競技人口はなんと約2億6,000万人を超えるとされています。
ルールの簡単さ、どこでもプレイできる気軽さが、サッカーとラグビーの明暗を分けることになったのでした。
ラグビーボールの歴史
「昔のボールは豚の膀胱を膨らませたものでした。」というと、驚かれるかもしれません。しかしこれは事実です。
初期のボールは、豚の膀胱をパイプを使って口で空気を送り込んで膨らませ、革で包んだものが始まりとされています。
https://www.rugbyschool.co.uk/about/history/a-history-of-rugby-football/
初のゴム製フットボールを発明した、リチャード・リンドン(1816年6月30日-1887年6月10日)は、元々は革靴などを作る革細工職人でしたが、
https://en.wikipedia.org/wiki/Richard_Lindon
彼の店がイギリスはラグビー校の近くにあったため、度々ラグビー校の生徒に依頼されボールを制作していました。
その度に彼の奥さん(ミセス・レベッカ・リンドン)は豚の膀胱を口で膨らませ、ボールを製作していました。
しかし豚の膀胱を口で膨らませることで、豚の病気が口を通して彼女の体を蝕み、その結果彼女は病気にかかり亡くなってしまいました。
悲しみにくれるリチャードは、1862年にインドのゴム製膀胱をボールの素材として使用する事を思いつきました。
このゴム製膀胱は口で膨らませるのが困難であったため、彼は医療用のガラスのシリンジに着想を得て、真鍮製の空気入れを開発しました。
これをロンドンで開催された展覧会でデモンストレーションし、多くの顧客を得ました。具体的にはオックスフォード大学、ケンブリッジ大学、ダブリン大学の主要なフットボールメーカーとして、認められていったのでした。
現代の紳士:ラグビープレイヤーへ
このような歴史を背景として、現在のラグビーというスポーツが確立されていきました。
2019年ラグビーW杯で、日本を大いに沸かせてくれた日本の紳士たち。
荒々しい戦いの中であってもルールを厳守し、何よりフィールドの内外でお互いを敬う”紳士たるものの振る舞い”には、多くのものを学ばせていただきました。
「勝てば官軍」、「勝利が全て」の時代は終わり、これからは「相手を敬い、良いところを自らのものとする」紳士の時代が到来することを予感させてくれました。
あいにく私には彼らのような恵まれた体躯も、溢れるエナジーも持ち合わせがありませんが、せめて彼らが見せてくれた気高き精神を、これからの人生の中で自らのものとし、また活かして行ければと考えております。
当ブランド、Country Gentleman
同じく”紳士”の精神を元に私が立ち上げたブランド、Country Gentleman。
中世のヨーロッパで、流行ばかりを追いかける都会からは距離を置き、田舎の領主として土地や家畜、民を守り育んでいたのが”田舎の紳士”、つまりはCountry Gentlemanでした。
日本随一の紳士として知られるのが、白洲次郎氏ですが、彼も「あの人はカントリー・ジェントルマンだ、と言われる人が本物の紳士だ」とおっしゃっていたそうです。
”消費”ばかりがもてはやされる現代で、最先端と呼ばれるものに目を向けながらも、自分は”守り・育む”ということに価値を置き、淡々と日々を送るその”Country Gentleman”という生き方があることを知り、ブランドの名前としました。
そんなCountry Gentlemanでは、ヴィンテージの銀食器をリメイクしたヴィンテージアクセサリーを製作・販売しております。
こちらは、Gorham社製のヴィンテージスプーンから制作した、ヴィンテージスプーンリングです。
今から遡ることなんと約149年前に、Gorhamの初期のデザイナーGeorge Wilkinson(1819-1894)によって発表されたのが、この"Corinthian"と呼ばれるパターンでした。
ちなみにこの”Corinthian”には「華麗な」や「(古代ギリシャの)コリント式」といった意味合いが含まれています。
コリント式とは、古代ギリシャの建築様式の一つであり、アカンサスと呼ばれる植物の葉や、細身の柱身が特徴の美しいデザインとなっています。つまりはジュエリーの世界に、建築様式からインスピレーションを持ち込んだ作品とも言えます。
小さめのスプーンを一つ丸ごとリングとして仕立てており、特別なリングをお求めの方にこそ、お試しいただきだい作品となりました。
当ブランドではその他にも、フォークをバングルとしたフォークバングルや、第二次大戦時のIDブレスレットなど、味わい深い歴史をその身に宿した、厳選されたヴィンテージアクセサリーを多数取り揃えております。
現代を生きる紳士・淑女にこそ、身につけて頂ければこの上なく幸せに思います。
Country Gentleman
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