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バッテリーバードの知られざる歴史とは

更新日:2022年4月4日


日本でも一部のファッションフリーク・ネイティブアメリカン好きにしか知られていない、現在ではもはや失われつつあるヴィンテージアクセサリー。

それが今回ご紹介するサントドミンゴ族のネックレス、【バッテリーバード(Battery Bird)】です。

Country Gentleman製のバッテリーバード

 

<2022年4月4日 追記:新作バッテリーバード「ヴィンテージダイス バッテリーバード"Lucky You"」>



カントリージェントルマン2作目となる、オリジナルバッテリーバード”Lucky You”は、これまでにない素材「ヴィンテージダイス」を使用した特別な一品となります。


ぜひこの機会にお試しください。

 

Battery Bird(バッテリーバード)についての歴史を詳細に記された記事や文献は、現在日本にはほとんど存在していません。

逆に言えば、それこそが”知られざるヴィンテージアクセサリー”の証明でもあります。

この【バッテリーバード(Battery Bird)】は、シルバーなどのネイティヴアメリカン定番の素材を一切使わず、ほとんどがプラスチック(ベークライトなど)でできているのですが、

その”独特の雰囲気”や”貫禄”は数あるヴィンテージアクセサリーの中でも特に異彩を放っています。

今回は約1年半をかけて調査を行った、失われつつあるヴィンテージアクセサリー【バッテリーバード】の歴史を、ご紹介していきたいと思います。

 

バッテリーバードとは

Battery Bird(バッテリーバード)とは、1920年末ごろからネイティブアメリカンの部族の一つであるサントドミンゴ族が制作していた、身の回りにあるプラスチックなどから作られたネックレスのことを指します。

https://www.shiprocksantafe.com/items/38638

そのほとんどはネイティヴアメリカン達の中で神聖な鳥と考えられていた、Thunder Bird(サンダーバード)をモチーフとして作られています。

現在ではほとんど製作されていない、文字通り幻のネイティブアメリカンジュエリーの一つです。

最近ではRalph Laurenの高級ラインであるブランド【RRL】のInstagramでも紹介され、高感度なファッショニスタ達から、徐々に注目を受け始めているジュエリーとなっています。

 

サントドミンゴ族について

主にバッテリーバードを製作していたのが、サントドミンゴ族と呼ばれるネイティブアメリカン達です。

彼らの住むサントドミンゴプエブロ(プエブロとは、インディアンの伝統的な集落や共同体のことで、メキシコの北部とアメリカ南西部、特にアリゾナ州及びニューメキシコに多くみられます。

ちなみに現在は約35,000人程度のプエブロ・インディアンがいるとされています。)は

ニューメキシコ州のSandoval Countyに位置し、サンタフェから南に約40kmほどの位置に存在しています。最後のアメリカ国勢調査では、人口2,550人となっています。

あまり知られていませんが、この集落は1926年から1932年までのかの有名な”Route 66”上にあったアルバカーキ (Albuquerque)のすぐ近くに存在しており、

その立地のよさから、彼らの作り出すアクセサリーは多くの観光客の目に触れることとなりました。

現在ではケワ(Kewa)プエブロへ改名されていますが、多くの素晴らしいジュエリーアーティストを擁するネイティブアメリカの部族の一つです。

サントドミンゴ族の作品として広く知られているのが、Heishi(ヒシ)と呼ばれる平たく小さいビーズです。

https://www.ebay.com/itm/Vtg-Santo-Domingo-Heishi-NECKLACE-Shell-Turquoise-Green-Jasper-Jet-Coral-18-L/233248407321?hash=item364eb03f19:g:xxgAAOSwX6Nc-AqN

そもそもこのHeishiとはサントドミンゴ族の言葉で”貝”を表しています。

彼らはサントドミンゴプエブロ近くに流れる、リオ・グランデ川などで採れる貝などから非常に小さく細かいビーズを制作していました。

このHeishiのビーズの完成度の高さは他の部族からの評価も非常に高く、特にズニ族などは自らの作品にHeishiビーズを取り入れるほどで、みなさんが持っているネイティブアメリカンジュエリーにも含まれているかもしれません。

 

バッテリーバード誕生の歴史的な背景

1929年に起こった世界恐慌により、アメリカでは一時期1,300万人もの失業者が発生するなど、人々は貧困にあえいでいました。

ネイティブアメリカンたちもその影響を受けており、ジュエリー制作の面でも深刻な物資・材料不足に悩まされていました。

世界恐慌の影響により、彼らの作品作りに欠かせない「質のいいターコイズ」や「シルバー」などの材料の入手も非常に困難になり、

ルート66を通る観光客向けのジュエリーも作れなくなってきてしまったのでした。

そんな苦しみの最中にサントドミンゴ族が生み出したのが、このバッテリーバードです。

ちなみに、バッテリーバードは別名Depression Necklaces(恐慌ネックレス)とも呼ばれており、その名前からも世界恐慌との関係の深さが分かります。

 

ネイティブアメリカン=シルバー

ここで少し話がわき道に逸れますが、皆さんはネイティブアメリカンのアクセサリーというと、シルバーでできたものを想像されるのではないかと思います。

今では日本でも多くの芸能人が身につけており、人気が高騰し続けているのが、ネイティブインディアンのシルバージュエリーです。

https://www.liveinternet.ru/users/1227742/post384105485/

そもそもネイティブアメリカンのシルバージュエリーが人気となった大きなきっかけの一つが、Fred Harvey Companyでした。

Fred Harvey Companyを起業したFred Harvey(フレッドハービー)はイギリス人で、19世紀に流行した鉄道での旅行にビジネスチャンスを見出し、

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A3

1876年からレストラン「Harvey House」をオープンし、最終的に鉄道の沿線に47もの店舗を持つまでになった、伝説的経営者です。

彼の会社は、レストランに来ている観光客達が、その土地にまつわるみやげ物を求めていることに気がつき、ネイティブアメリカンに観光客向けのシルバージュエリー制作を依頼。

レストランなどでそれを売ることにしました。

https://www.cbsnews.com/news/harvey-house-how-the-west-was-won-by-a-restaurant-chain/

この読みが大当たりし、観光客向けのシルバージュエリーは飛ぶように売れていきました。

 

Fred Harvey Style(フレッドハービースタイル)

それまでのネイティブアメリカンのシルバージュエリーは「重く、ごつく、値段が高い」モノがほとんどでしたが、

バイヤー兼マーチャンダイザーを務めたHerman Schweizerは、それを観光客向けに「軽く、薄く、値段が安い」ものへと作り変えるよう指示して作らせました。

http://www.ebay.com/itm/Vintage-Sterling-Silver-Turquoise-Bangle-Bracelet-Eagle-Native-American-/131925127713?roken=cUgayN

この転換こそが、観光客に売れた大きな要因となったのでした。

この頃のシルバージュエリーは、その経緯からFred Harvey Style(フレッドハービースタイル)と呼ばれ、現在多くのコレクターによって愛されています。

ちなみにPolo RalphlaurenやRRLなどで知られる伝説的デザイナー、Ralph Lifshitzもこの頃のシルバージュエリーをこよなく愛し、収集しているコレクターの一人です。

 

バイヤーの意見が多く含まれたデザイン

観光客向けに作り出された、Fred Harvey Style。

しかしそれは同時に、ネイティブアメリカンから自由な発想を奪ったともいえます。

このころ制作されたいわゆるFred Harvey Styleのシルバージュエリーのデザインには、バイヤーから指示されたものが多く含まれていました。

また、そのようなデザインのものがよく売れると知ったネイティブアメリカンたちも、自分たちが望むスタイルではなく、

【商業的にどうすれば売れるのか】を考えながら制作をするようになっていました。

一方、今回ご紹介している(バッテリーバード)は、どの企業とも契約を結んでいない、いわば自分達のデザインのみで、作り出されたアクセサリーです。

https://www.ebay.com/itm/1930s-Thunderbird-Jewelry-Car-Battery-Depression-Santo-Domingo-Necklace-Set-VTG-/283507773162?hash=item4202614eea

それゆえに、デザインも色彩も、素材すら自分達の思うままに作られており、独創性をひしひしと感じることができます。

その自由な創造性こそ、私も憧れ、魅力を感じているところにもなっています。

 

バッテリーバードの素材

さて、話をバッテリーバードへ戻します。

世界恐慌により物資不足が起こった中で、彼ら(サントドミンゴ族)が素材として目をつけたのが、いわゆるどこででも手に入る”ゴミ”でした。

具体的にはクズ石と呼ばれるような価値の低いターコイズ(再生ターコイズ)、古いレコード、プラスチック製の食器(Daily Queen Spoonなど)、

さらには貝、セルロイド製の櫛、日焼けしてしまった動物の骨、バッテリーバードの名前の由来ともなった廃車のバッテリーなど、ごく普通の身の回りにある物を素材として使用しました。

特に車のバッテリーはプエブロ(集落)がルート66上にあったことからに手に入りやすく、これらの素材を用いて彼らはこの美しいバッテリーバードを作り上げたのでした。

そしてバッテリーバードによって、彼らは一つの経済基盤を確立することができるようになったのでした。

バッテリーバードは1930年代から駅のホームやガソリンスタンドなどで販売され始め、当初は1−2ドルほどの安価で売られました。

はじめこそ「Tourist Junk(ツーリストジャンク)」と呼ばれ低い評価に甘んじていましたが、現在ではその歴史的な背景や色彩の美しさが人気となり、

一つ10万円を超えるほどの高値で取引されることも決して珍しくありません。

https://www.skinnerinc.com/auctions/2705M

主な素材がプラスチックであり、壊れやすいこともあったため現在では1930−1950年ごろの最盛期に製作されたものは数が少なくなってきており、

残っていたとしても接着剤の劣化などでターコイズが欠けていたりなどしていることが少なくありませんが、

それも一つの「味」として楽しめる、いわゆる【大人】のヴィンテージアクセサリー愛好家達に好まれ、身につけられています。

 

Batterybird -OILY BOY-

今回Country Gentlemanでは、これらの膨大な歴史や背景をリスペクトし、

「どうせ作るならば」との考えから、あえて加工にかなりの手間がかかる古いヴィンテージ素材からアップサイクルをすべく、バッテリーバードの製法を調査・分析・いくつもの試作品を製作しました。

「歴史や背景の調査」・「使用される素材の調査、収集」・「ネイティブアメリカンの製法の調査、実践。」これらすべての作業を地道に進めること1年半。

ようやく納得がいく【Country Gentleman製バッテリーバード】-OILY BOY-を完成させることができました。

ヴィンテージのバッテリーバード

強度の問題からワイヤーのみ新品を使用しておりますが、それ以外は全て古いヴィンテージ素材から制作した新しいバッテリーバードとなります。(1940年代のヴィンテージレコード、1930年代のベークライト、アリゾナ産ターコイズ等)

バッテリーバード(レッド)

なんども失敗を繰り返し、さまざまな素材を試しながら組み上げた全く新しいバッテリーバード。

まだまだSanto Domingo族が作り上げた芸術品のような作品たちには及びませんが、それでも妥協を一切せず、心を込めて作り上げた作品となります。

ターコイズチップが美しいデザインのサンダーバード

さらにポイントとなる赤のパーツには、これまでどのバッテリーバードでも見られることのなかった新たなヴィンテージ素材を採用。目で見て楽しめるワンポイントとなってくれました。

そのほか模様や配置にもこだわり、最終的にこの新しいバッテリーバードが完成しました。

全ての素材がヴィンテージで作られた傑作

古き良き時代に想いを馳せられる、ヴィンテージ素材から製作した全く新しいバッテリーバードを身につけていただく事で、その誕生の歴史と背景までも楽しんでいただければ、と思っております。

※素材に関しましての全ての詳細は、ご購入者様のみにお伝えさせていただきます。



 

新作バッテリーバード「ヴィンテージダイス バッテリーバード"Lucky You"」のご紹介



先ほどご紹介いたしました、"OILY BOY"に続く新たなバッテリーバードのご紹介です。


それがこちらのバッテリーバード”Lucky You”です。


独特なヴィンテージ素材・製法にこだわり抜いたこちらの作品につきましては、別記事:NEW! ヴィンテージダイス バッテリーバード "Lucky you" にて、


詳しくご紹介させていただきます。


お時間にもし余裕がおありであれば、ぜひご一読いただけますと幸いです。



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