激動の時代を過ぎ、アメリカのアクセサリーはさらなる進化を遂げていきました。はたから見れば1950年代と1960年代にはそこまで大きな変化はないように感じられるかもしれません。しかしその変化は非常に早いものがありました。
ヴィンテージ素材をリメイクし、新しいヴィンテージアクセサリーへ生まれ変わらせている当ブランド、カントリージェントルマンならではの視点で、ここでは1960年代のアクセサリーの歴史について触れていきたいと思います。
1960年代とは
参考:https://www.military.com/undertheradar/2017/09/29-best-politically-incorrect-vietnam-war-slang-terms
まず触れておきたいのがベトナム戦争です。ベトナム戦争は少し特殊な戦争で、宣戦布告が行われなかったためにいつから始まったのかという部分については明確な定義が難しい部分があります。
本格的にアメリカが関わることになったのが1964年のトンキン湾事件からで、ここからアメリカの泥沼の戦いが始まるのでした。
アメリカ国内ではこの戦争に対して強い反発がありました。その当時の戦争政策に対して多くの国民、果てはアメリカ軍内部でも多くの人が反発し、大規模な反戦活動が行われました。
参考:http://allthatsinteresting.com/a-brief-history-of-hippies
そんな中生まれた文化こそが”ヒッピー”でした。ヒッピーとは愛と平和と自然を愛し、人間として自由に生きようという思想を持つ人々のことでした。このヒッピーがファッションの世界でも一大ムーブメントを起こすことになっていくのです。
また、この年代で特筆すべき点は、大量生産品の流通です。工場の機械の性能が向上したのと同時に、服の素材が安価で容易に製造できるようになったために、既製服の素材は天然素材からプラスチックなどの安価なものへと置き換えられていきました。
それに伴い、多くのデザイナーが安価な素材からアクセサリーを作り出すことに熱中していきました。
1960年代の流行
この年代の流行は、1950年代から引き続いているものが多く、シルバーやゴールドなどは相変わらずその人気を保持していました。
参考:https://www.pinterest.jp/pin/264797653063364177/
流行したところといえば、ただ艶やかで滑らかなスタイルであった金属に、ハンマーで叩いたような模様や、ザラザラとした質感を表面に宿すといった表面の加工が挙げられます。
また、デザインでは1910年代から1930年代に流行した、直線的で幾何学的なデザインのアール・デコが再流行しました。ハニカム(蜂の巣のような模様)状のピアスや、サークル状のネックレスなどが広く受け入れられていったのもこの頃です。
さらに流行となったのが、安価な素材の代表格であったプラスチックです。
参考:https://www.pinterest.co.uk/pin/138063544810609741/
この頃は様々な素材が進化しており、樹脂やビニール、ラインストーンなどと組み合わせることで、プラスチックの持つ可能性が最大限に発揮されることとなりました。カラーも豊富で、デザイナーたちはその卓越した色彩感覚により、今までにないほど色彩豊かなアクセサリーを市場に送り出しました。
ヒッピー文化とも相まって、自然の中でも特に花をモチーフにしたジュエリーやプラスチック製のネックレスなどの人気が高まりました。
若者たちがそれまでの大人たちの古い価値観を壊そうともがいていた、それがこの1960年代ともいえます。
力強く、カラフルで、大きなデザイン
安価で種類豊富な素材、自由な気風、カウンターカルチャーとしてのヒッピー文化。この時代はデザイナーがデザインの実験を行うには非常に適した年代であったといえます。なぜなら製造も販売も購入も、いずれもコストを抑えて行うことができたため、市場の動きが見やすかったからです。
またこの頃のデザインの特徴は、”華奢で可憐な”というよりは”大胆不敵な”という表現が似合うかもしれません。1960年代には、ネックレス、ピアス、リングのどれにおいても、太く大胆な力強いデザインが好まれました。
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カラーもとても大胆で、デザイナーが1から10まで提案したものをそのまま着けるのではなく、例えばバングルなどは自分の好きな色を組み合わせて何個も重ね付けすることで、自分の個性を発揮でき、多くの女性が自由なファッションを楽しんでいました。
そのため、1960年代のプラスチック製のアクセサリーは今でも非常にたくさん見つけることができるのです。
特にプラスチックは加工技術が発達したことにより、デザイナーが思うように複雑なデザインや微妙な質感も表現することが可能となり、彼らにとってはとても楽しい時期であったろうことは容易に想像できます。
このように時代が移り変わるにつれ、消費者の思想は変わり、ファッション業界の意識も変わり、最終的にはそこで生まれてくるアクセサリーも都度そのデザインを変えてきたのです。
当ブランド、カントリージェントルマンではそんな中でもスプーンというマテリアルに注目し、スプーンリングやバターナイフブレスレットなど、独創的な作品を作り続けています。
例えばこちらはWhiting社のKing Edwardと呼ばれる、1901年に発表されたヴィンテージフォークから制作した、ヴィンテージフォークバングルです。
フォークという素材の珍しさと、100年という時を超え現在に生まれ変わった希少性が、作品に重みと貫禄を与えてくれています。
こちらは1815年にアメリカで設立されたWallace社が、1941年に発表したGrand Baroqueと呼ばれるバターナイフから制作した、ヴィンテージバターナイフバングルです。
バターナイフのプレーンな部分と、Wallace社の優れたデザイナーによって作り上げられた持ち手部分の彫刻のコントラストが、非常に美しい作品です。
その他、スプーンリングをはじめとするヴィンテージアクセサリーは、こちらからご覧いただけます。