ラブトークンの知られざる歴史

最終更新: 2020年1月24日

紳士が身につける指輪として知られている、シグネットリング

ゴールドのアンティークシグネットリング

現在でもチャールズ皇太子をはじめとして、世界中のセレブリティが身につけていることでも知られています。


そんなシグネットリングの特徴の一つが、平らな面に高い技術で彫り込まれた刻印(モノグラム)でした。


しかし実は、刻印が彫り込まれたのはシグネットリングだけではなく、コインにも刻まれていたことをご存知でしょうか。

ヴィンテージラブトークンネックレス -"TLE"1885-


今回、日本ではまだほんのごく僅かな人しか知らない、美しき彫刻コイン”ラブトークン”の知られざる歴史をご紹介していきたいと思います。

ラブトークンとは


ラブトークンを一言で言えば、”コインの片面(あるいは両方)にイニシャルやメッセージを刻み込んだもの”と言えます。


ラブトークンの歴史の始まりは、正確にはわかっていません。有力な説としては、


1800年代、ヴィクトリア朝時代の船乗りが航海に出る前に愛する人に自分をそばに感じていて欲しいと、コインに自らのイニシャルを刻み込んで渡したという説。


または1700年代後半から1800年代に、イギリスで重大な犯罪を犯したものはオーストラリアに移送されていました。その際、囚人たちが妻や恋人、家族などに「これを見て自分を思い出して欲しい」と、このラブトークンを渡したとされる説があります。


いずれにしても、自らの代わりとして、そして自らの愛を表現するための一つのツールとして、このラブトークンは機能していました。


(ちなみにこの頃の囚人のラブトークン は価値が高く、1,000ドルほどで取引されることも珍しくありません。判別は非常に困難ですが・・)

ラブトークンの彫刻


ラブトークンには様々な物が刻み込まれます。


名前のイニシャル、相手へのメッセージ、日付、独創性に溢れる絵などがその代表的な例として挙げられます。


最も特徴的なデザインが、「トリプルオーバーラップイニシャル」と呼ばれる物です。

CIRと彫刻されたラブトークン

これは<姓><ミドルネーム><名>の計3つのイニシャルを一つに重ねたデザインを指し、そのデザインは彫刻家・銀細工師それぞれで異なりました。


一般的には、

・横に一番広いイニシャルが<姓>

・縦に一番長く狭いイニシャルが<名>

・中央にあり小さいイニシャルが<ミドルネーム>

を表しているとされます。(実際は文字のバランスによって異なります)


近年注目を集めるシグネットリングや、銀食器に彫り込まれるモノグラム(彫刻)とは大きく異なり、力強く、時に粗野でありながらも強いエネルギーを感じさせてくれる、独自の彫刻技術が施されています。


多くの人は宝飾店や彫刻師、銀細工師のもとを訪れ、各々が凝ったデザインでの彫刻を依頼し、たくさんのラブトークンがこの世に生まれていきました。


余談ですが、1800年代頃には印刷業界では木版印刷から活版印刷への大規模な変遷が始まり、職を失いかけた木彫職人たちはこのラブトークンの彫刻を請け負うことも多かったとされています。

手作りのラブトークン


ラブトークンの始まりの一つとされる<囚人のラブトークン>は、多くの場合自らの手で彫刻がなされました。

ヴィンテージの囚人トークン

https://www.nma.gov.au/explore/collection/highlights/convict-love-tokens


その際使用される硬貨は銅でできたペニーであり、その柔らかさが彫刻のしやすさにつながっていました。


まず彼らは片面を平らな場所で削り、滑らかでプレーンな面を作り出しました。次に先の尖った釘などを使って、思い思いのデザインや文字をそこに彫りつけたり、点描していったのです。<