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ラブトークンの知られざる歴史

更新日:7月3日

紳士が身につける指輪として知られている、シグネットリング

ゴールドのアンティークシグネットリング

現在でもチャールズ皇太子をはじめとして、世界中のセレブリティが身につけていることでも知られています。


そんなシグネットリングの特徴の一つが、平らな面に高い技術で彫り込まれた刻印(モノグラム)でした。

(詳しくはシグネットリングの知られざる歴史もご覧ください。)


しかし実は、刻印が彫り込まれたのはシグネットリングだけではなく、コインにも刻まれていたことをご存知でしょうか。


今回、日本ではまだほんのごく僅かな人しか知らない、美しき彫刻コイン”ラブトークン”の知られざる歴史をご紹介していきたいと思います。

 

ラブトークンとは


ラブトークンを一言で言えば、”コインの片面(あるいは両方)にイニシャルやメッセージを刻み込んだもの”と言えます。


ラブトークンの歴史の始まりは、正確にはわかっていません。有力な説としては、


1800年代、ヴィクトリア朝時代の船乗りが航海に出る前に愛する人に自分をそばに感じていて欲しいと、コインに自らのイニシャルを刻み込んで渡したという説。


または1700年代後半から1800年代に、イギリスで重大な犯罪を犯したものはオーストラリアに移送されていました。その際、囚人たちが妻や恋人、家族などに「これを見て自分を思い出して欲しい」と、このラブトークンを渡したとされる説があります。


いずれにしても、自らの代わりとして、そして自らの愛を表現するための一つのツールとして、このラブトークンは機能していました。


(ちなみにこの頃の囚人のラブトークン は価値が高く、1,000ドルほどで取引されることも珍しくありません。判別は非常に困難ですが・・)

 

ラブトークンの彫刻


ラブトークンには様々な物が刻み込まれます。


名前のイニシャル、相手へのメッセージ、日付、独創性に溢れる絵などがその代表的な例として挙げられます。


最も特徴的なデザインが、「トリプルオーバーラップイニシャル」と呼ばれる物です。

CIRと彫刻されたラブトークン

これは<姓><ミドルネーム><名>の計3つのイニシャルを一つに重ねたデザインを指し、そのデザインは彫刻家・銀細工師それぞれで異なりました。


一般的には、

・横に一番広いイニシャルが<姓>

・縦に一番長く狭いイニシャルが<名>

・中央にあり小さいイニシャルが<ミドルネーム>

を表しているとされます。(実際は文字のバランスによって異なります)


近年注目を集めるシグネットリングや、銀食器に彫り込まれるモノグラム(彫刻)とは大きく異なり、力強く、時に粗野でありながらも強いエネルギーを感じさせてくれる、独自の彫刻技術が施されています。


多くの人は宝飾店や彫刻師、銀細工師のもとを訪れ、各々が凝ったデザインでの彫刻を依頼し、たくさんのラブトークンがこの世に生まれていきました。


余談ですが、1800年代頃には印刷業界では木版印刷から活版印刷への大規模な変遷が始まり、職を失いかけた木彫職人たちはこのラブトークンの彫刻を請け負うことも多かったとされています。

 

手作りのラブトークン


ラブトークンの始まりの一つとされる<囚人のラブトークン>は、多くの場合自らの手で彫刻がなされました。


その際使用される硬貨は銅でできたペニーであり、その柔らかさが彫刻のしやすさにつながっていました。


まず彼らは片面を平らな場所で削り、滑らかでプレーンな面を作り出しました。次に先の尖った釘などを使って、思い思いのデザインや文字をそこに彫りつけたり、点描していったのです。


その他にも、彫刻師や銀細工師に彫刻を依頼することのできなかった人々は、自らの手で削り、彫刻をすることで愛する人への特別なラブトークンを作り上げていきました。


ちなみに硬貨を加工することは違法でしたが、彼らはそんなことは気にせずその人気はどんどん高まっていきました。

 

愛を告げるラブトークン


ある一説では、ラブトークン は求婚の際の一つのツールとしても機能していたことがあったことがわかります。



例えば求婚したい男性が女性にラブトークンを渡す際に、自らのイニシャルと、彼女の名前のイニシャルを予めコインに刻んでおき、求婚の際にそれを女性に贈ります。


彼女がそれを身につけてくれたら、二人は晴れて婚約できるというものです。


古来から西欧諸国では、「グッドラックコイン」や「タッチピース」(詳しくは別の機会にご紹介致します)など、コインを幸運をもたらすものとして捉えており、


その一つの役割として、求婚のツールとしても機能していたと考えられます。

 

IDタグとしてのラブトークン ーアメリカへの波及ー


イギリスで始まったとされるこのラブトークンのカルチャーは、その後19世期には海を渡りアメリカにも波及することとなります。


そのきっかけとなったのが、1861年から始まった南北戦争です。


詳しくはIDブレスレットの知られざる歴史でもご紹介しておりますが、この頃のアメリカにはまだ現在のようなIDブレスレットやIDタグは存在せず、兵士が死亡した際に身元がわからないままに埋葬されることが多くありました。


Internet Archive Book Images, No restrictions, via Wikimedia Commons


彼らはそれを非常に恐れ、自らの名前や所属部隊などをコインに刻み込んで身につけることにしました。これにより適切な形で葬られることができたため、事実多くの兵士たちがこのラブトークンをIDブレスレットやIDタグとして身につけていました。


または、出兵する際に妻や彼女、親しい知人や家族に対して「自分を思い出して欲しい」、または「愛している」などのメッセージをこのラブトークン に刻み込み、贈る習慣もこの頃から始まりました。


あまりの人気ぶりに、一時アメリカの10セント硬貨(当時は10セント硬貨は純度90%の銀貨であり、多くの場合ラブトークン には10セント硬貨が採用されました)が、不足するほどだったとも言われています。


これらの出来事により、アメリカでもラブトークン が広く認識され、一つの文化・慣習として受け入れられていきました。


20世紀に入ると、このラブトークンの慣習は徐々になくなり、現在ではラブトークン が新たに制作されることはほとんどありません。


しかし先人たちが自らの愛を示す一つの証として、ラブトークンの文化は今でも多くの人に愛されています。

 

Country Gentlemanのヴィンテージラブトークンネックレス


当ブランド、Country Gentlemanはこのような失われつつある、そして日本ではまだまだ知られていない、一風変わったヴィンテージ素材を基に、様々な作品を制作・発表しております。


今回はこのラブトークンの歴史を紐解く中で、いくつか手に入れたヴィンテージのラブトークンから、ネックレスを制作致しました。


ヴィンテージラブトークン ネックレス

こちらは1885年のアメリカ10セント硬貨から制作した、ヴィンテージラブトークンネックレスとなります。


ヴィンテージネックレス

とても美しい彫刻が施されており、3つのイニシャル”TLE”が彫り込まれています。(このデザインは「トリプルオーバーラップイニシャル」と呼ばれるデザインとなります。)


丁寧に磨きをかけ、さらにチェーンはスターリングシルバー(純度92.5%の銀)製の50cmのものを採用。

1点限りのヴィンテージアクセサリー

あえて細めのチェーンにすることで、ヴィンテージラブトークンに目がいくようにバランスを取っております。


日本で”ラブトークン ”と検索をしても、Instagramで調べても、このラブトークンはまだ日本では全く知られておりません。


誰とも違う、特別なヴィンテージアクセサリーをお求めの方にこそ、お試しいただきたい逸品です。もちろん1点限りとなりますので、この機会にお試しをいただければと思います。


Country Gentleman


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