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シグネットリングの知られざる歴史

更新日:2021年6月4日

紳士は基本的に、余分な装飾品は身につけないものとされています。

華美なネックレスやブレスレットなどはもってのほかで、個性を出せる部分はもっぱら胸元のハンカチーフかカフスリンク、または時計か革靴などで自らのスタイルを表していました。

しかしそんな紳士のファッションにおいて、1つだけ例外があります。

それが【Signet Ring(シグネットリング)】と呼ばれる指輪でした。

ヴィンテージのシグネットリング

今回はその”紳士の指輪”とも呼ばれるシグネットリングについて、知られざる歴史を紐解いていきたいと思います。


※シグネットリング といえばイギリス紳士が身につけていることで有名ですが、実は世界中にシグネットリング は存在しています。

 

シグネットリングの始まり

シグネットリングの歴史は古く、その始まりは紀元前およそ3500年前のエジプトまで遡れると言います。

こちらは円環の側面に絵が彫られており、それを回転させることで印を刻むことができるメソポタミア文明時代のものです。

メソポタミア時代の円環

https://sites.google.com/site/completearthistory/non-western-art/mesopotamian-seals

その後王たちは自分の名前や自らを示すための印などを刻んだ指輪を身につけるようになりました。これがシグネットリングの始まりとされます。

この頃から、権力者たちは法的文書や自らの宣言の公式性を認めるために、このリングを印として用いていました。

初めの頃はこれらのリングは石や陶器、象牙などで作られていましたが青銅器時代以降には金属の加工が行えるようになり、

徐々にリングの材質は金属へと移行していくことになります。

 

シグネットリングの隆盛

その後も権力者が「これは自らが認めたものである」ことを示すために、シグネットリングを使用するという文化は続いていきます。

シグネットリングを身に着ける中世の貴族

中世になると、ほとんどの貴族がこのシグネットリングに家紋などを彫り込んだものを身につけ、手紙やその他の重要な書類に署名し、最後にこれを封印するために使用しました。

この点から、日本で言えば印鑑に当たるものがシグネットリングであったとも言えます。

その後14世紀になると、エドワード2世によって「全ての公式な文書はシグネットリングがなければならない」と定めたことにより、シグネットリングは公的に非常に重要な意味を持つことになりました。

「この書類は本当にあの人が認めたものなのか」「この文書は正式なものなのか」などを判断する上で、シグネットリングはもはや必要不可欠なものとなっていったのです。

 

市場にシグネットリングがあまり出回らない理由

これは余談になりますが、現在市場には状態の良いシグネットリングはほとんど出回りません。

その理由は、所有者の死後にシグネットリングは破壊されていたからだとされています。

例えば国王Aが死んだ後に、そのシグネットリングが残っていればそれを使ってどんな偽造文書でも簡単に作り出すことができてしまうため、

蝋をスタンプで封印する

多くの場合シグネットリングは所有者の死後に儀式とともに破壊されるのが通例となっていました。

そのため、現在では中世のシグネットリングを見つけることは、非常に至難の業と言えるわけです。



実際にローマ教皇のシグネットリングが破壊される儀式が再現された、非常に興味深い動画も掲載されておりますので、是非そちらもご覧いただければ幸いです。

 

受け継がれるシグネットリング

古いシグネットリングが市場に出回らないのには、もう一つの理由があります。

それは、「シグネットリングは代々受け継がれる」ためです。

黄金に輝くシグネットリング

そもそもシグネットリングを所有できることが許されていたのは、中世で言えば王や貴族などの高い位の人物でした。

その高い社会的地位を引き継ぐ一つの象徴として、その家系の指定相続人となった人間が、代々シグネットリングを受け継ぐことになりました。

祖父から父へ、父から息子へ、芸術品のようなこのリングは、現代でも世代を超えて受け継がれています


※世界のシグネットリング についてお知りになりたい方は、別の記事(シグネットリングはイギリスだけのもの?<世界のシグネットリングをご紹介>)もご覧ください。

 

現代のシグネットリング

現代のシグネットリングには、法的な効果は何もありません。

しかし、これまでにお話したような深みのある歴史、そして何よりその芸術性の高さから、多くのファッショニスタがこれを愛し、身につけています。

シグネットリングを愛用するセレブリティとしては、「King of Cool」と呼ばれた伊達男、スティーブ・マックイーンが自身のイニシャルを彫り込んだシグネットリングを常に身につけていたり、


伊達男、スティーヴマックイーン

一人の紳士として、またその気品高いファッションでも注目される「The Prince of Wales」、チャールズ皇太子もまたシグネットリングを常に身につけています。



チャールズ皇太子もシグネットリング の愛好家

他にも、男性ではフランク・シナトラやエルヴィス・プレスリー、ブラッドピットなどが身につけており、

女性ではカーラ・デルヴィーニュ、クロエ・グレース・モレッツやメーガン・マークル妃もシグネットリングを身につけていることが確認されています。

決して華美ではなく、さりげなく身を飾ることのできるいわゆる”品がある”リングとして、老若男女問わず幅広い世代の人々に愛されています。


※シグネットリング といえばチャールズ皇太子をはじめとしたイギリス紳士が身につけていることで有名ですが、実は世界中にシグネットリング は存在しています。


さらに言えば、現代においてシグネットリングは「紳士のための指輪」などとされていますが、史実を紐解けば女王などもこの指輪を身につけていた記述も多数存在しており、男女関係なく身につけられていたようです。


 

シグネットリングを身につけるなら

あなたがシグネットリングを身につけたいと思っているのならば、知っておきたいことが一つあります。

それは伝統的に言えばシグネットリングは左手の小指に着けるのが基本である、という事実です。

もちろん現代ではそのような伝統にとらわれずに好きな指に着ける人もいますが、シグネットリングの歴史を知っていて、かつそれに則って着用しようとする人は皆、左手の小指にリングを身に着けています。

(その証拠に、チャールズ皇太子は常に左手の小指にリングを身につけています。)

 

シグネットリングに必要不可欠な要素

注意したいこととして、近年その人気の高まりと共にシグネットリングの形をしたプレーンなリングが市場に溢れていますが、

Signet(シグネット)のそもそもの意味が”認印や印鑑、捺印”であることを示している通り、

その持ち主が一体誰なのか、もしくは何らかの文字が刻まれていなければ、それはシグネットリングの形をしたただのリングであるということです。

現代ではリングに美しいアルファベットや彫刻を施せる職人の数は減少の一途を辿っており、質の高い彫刻をオーダーすることは非常に難しいと言えますが、

もしシグネットリングを身につけられるのであれば、自分のこだわりを落とし込んだリングをぜひ見つけていただきたいと思います。


余談ですが、世界には超絶技巧を誇る彫金師が現在も存在しており、彼らの作り出すデザインからは感嘆の二文字しか思いつかないほど、素晴らしい美しさを誇っています。


詳しくは海外のシグネットリング -彫刻の最高峰とは-にてご紹介しておりますので、是非ご参考としていただければと思います。


また、当ブランドCountry Gentlemanでは、シグネットリング と非常に近いデザインの彫刻が施されたヴィンテージコイン”ラブトークン ”から、ネックレスを制作しております。


※ラブトークン については、詳しくはラブトークンの知られざる歴史をご覧ください。


美しい彫刻は全て職人や当時の人々の手作業で彫り込まれており、歴史を感じさせるデザインがヴィンテージアクセサリーとしての魅力を溢れんばかりに発露させております。


1点限りの作品となりますので、ぜひこの機会にお試しをいただければと思います。

 

もう一つの知られざる指輪の歴史:スプーンリング


シグネットリングとはまた別の味わい深い歴史を持つリングとして、スプーンリングと呼ばれるリングがあります。


詳しくは別の記事(スプーンリングの歴史)からご覧をいただければと思いますが、当ブランドCountry Gentlemanでは、ヴィンテージのシルバースプーンを使用したスプーンリングを多数取り揃えております。


こちらは、Wallaceのヴィンテージスプーンから制作した、特別なヴィンテージアクセサリーです。

1941年(今から79年前)に発表されたこのGrand Baroqueのパターンは、当時先進的な立体的彫刻が施されており、3Dimentionシリーズの中でも非常に人気の高いパターンとなりました。


複雑かつ精緻な彫刻は、アール・ヌーヴォー(豪華絢爛・有機的なデザイン)の影響を多分に受けており、見るものに強烈な印象を与える存在感を放っています。


スプーンを丸ごと一つのリングに仕立てており、ヴィンテージの味わいを楽しみたいあなたにこそ、お試しいただきたい作品となります。

当ブランドではその他にも、バターナイフをバングルに仕立てたヴィンテージバターナイフバングルや、第二次大戦時のIDブレスレットなど、思わず語りたくなるような歴史をうちに秘めた、厳選したヴィンテージアクセサリーを多数取り揃えております。


ただアクセサリーを身につけるだけではなく、その奥に秘められた歴史にこそ魅力を感じていただける方にこそ、ぜひご覧をいただければと思います。


Country Gentleman

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