今回は久々の登場となる、ヴィンテージ素材を使用して制作した、バッテリーバードのご紹介となります。
今回も以前制作したバッテリーバード"Country Boy"と同様に、素材のほとんどにヴィンテージの素材を使用しているほか、通常バッテリーバードではほとんど使用されない素材を採用致しました。
それがこちらのヴィンテージダイス(サイコロ)です。
1940年代(今から80年前ごろ)のベークライトと呼ばれる素材で作られており、とても味わい深い赤色がこのバッテリーバードに独特な雰囲気を与えてくれています。
※バッテリーバードの味わい深い歴史については、別記事:バッテリーバードの知られざる歴史とは をご覧ください。
ヴィンテージダイスの素材:ベークライトとは
ベークライトは現在世界中で使われている”プラスチック”の前身のような存在であり、1907年にレオ・ベークランドという化学者が発明し、彼の名前にちなんでベークライトと名付けられたとされています。

※1935年のベークライト樹脂とワニス検査室の様子
ベークライトは非常に硬く、また熱・電気に強く、セルロイドのような発火の危険性も低いことから工業製品としても使用されましたが、1925年ごろにはシャネルなどのブランドもその可能性に気づき、独自のデザインのベークライトジュエリーを発表するほどに、ファッションの素材としても注目を集めました。
初期のベークライトは透明性がなく、単調な色合いのものがほとんどだったのですが、American Catalin Corporationのベークライトは独自の技術により、透明度の高いものも制作できるようになり、応用範囲が一気に広まっていきました。
時期的にも1929年の世界恐慌によって、デザイナーたちは資材不足に喘いでいたため、このベークライトという可能性に満ちた素材に人気が集まり、1930年〜40年代にかけてはベークライト・ジュエリーと呼ばれるものが数多く誕生しました。

Lancdid at English Wikipedia, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
※ちなみに歴史を遡ればこの世界恐慌による資材不足から、ネイティブアメリカンが車のバッテリーなどから制作を始めたのがバッテリーバードであり、
その関係性の深さはバッテリーバードの別名がディプレッション(Depression:恐慌)アクセサリーであることからもわかります。
その後、ベークライトは現代のように加工や生産が楽なプラスチックに徐々に取って変わられていくことになり、1960年代ごろにはほとんど生産されることは無くなりました。
しかしながら。
これは一度手に取っていただければお分かりいただけるかと思うのですが、ベークライトは独特の質感、美しい光沢、現代のプラスチックとはまた違った重量感を持ち、
非常に味わい深い素材として現代でも多くの愛好家が存在し、特にベークライト・ジュエリーのコレクターは今でも世界各地にいらっしゃいます。
ワイヤー以外は全てがヴィンテージ素材を使用
今回制作したバッテリーバード「ヴィンテージダイス バッテリーバード "Lucky you"」には、1940年代のヴィンテージダイスを使用しておりますが、素材がベークライトとなっているために非常に硬く、加工には大量の手間と時間を要します。
しかしその独特な深い赤色は、このバッテリーバードに格別の雰囲気を与えてくれており、それら手間や時間を補ってあまりあるほどの価値のあるものだと確信しております。
今回カントリージェントルマンでは、ネイティブアメリカンのバッテリーバードに深い尊敬の念を込めながら、製法やその歴史、素材にこだわり抜いて、こちらの作品を制作致しました。
強度の関係上、ワイヤーのみ新品を使用してはおりますが、その他は全てヴィンテージ素材を一つ一つ加工し作り上げました。
1940年代のルビーのように美しい輝きを放つヴィンテージダイス
1940年代のまだ厚みがある頃のヴィンテージレコード
1930年代の非常に硬いベークライト
留め具はヴィンテージの銀食器を一つ一つ手作業で作成
アリゾナ産再生ターコイズ
など、どれも一つ一つ素材を厳選しその背景までを調べ上げた上で収集、加工を行ったこだわりの素材となります。

※素材の詳細に関しましては、ご購入者様のみにお伝えさせていただきます。
本当のサステナブルとは
現代では、これまでのような大量生産・大量消費というスタイルはもはや時代遅れの感が否めず、事実多くのブランドが「毛皮の使用を廃止」したり、「再生可能な素材で商品を生産」したりと、できる限り持続可能な形での生産活動を続けていこうと、試行錯誤を続けています。
例えば別記事:ヴィンテージアクセサリーを巡る思考の旅 でもお伝えした通り、ジーンズの生産には大量の水が必要になりますが、大手ジーンズブランドを中心として、その水の量をできる限り削減しようという試みも行われています。
しかしそのどれもが、生き物や資源の犠牲をなるべく”減らそう”とはしていますが、それらを”ゼロ”にすることはできないでいます。
私は「ヴィンテージ」というものが、サステナブルという考え方の一つの解決策であると考えています。
すでにこの世に生み出されたものを、「受け継ぐ」という考え方。時代を経ても捨てられることなく受け継がれてきたヴィンテージ素材や、アクセサリーの数々。
それらを私たちが受け継ぎ、また次の世代へと手渡していくことができれば、それは限りなく犠牲を”ゼロ”に近づけたままで、自由なファッションを楽しめる。という事になるのではないかと考えています。
そのような価値観を基に制作したのが、こちらのバッテリーバード「ヴィンテージダイス バッテリーバード "Lucky you"」となります。
一つ一つに手を抜くことなく、留め具やオリジナルタグさえもヴィンテージの銀食器を加工して制作した一点モノとなっております。

もちろん、本作品の元祖であるSanto Domingo族の作り出す、まるで芸術のようなバッテリーバードとまではいきませんが、
それでも彼らの歴史、文化、背景に深い尊敬を抱きながら、一切の妥協をせずに作り上げた作品となります。
ぜひこの機会に、お試しをいただければ幸いです。
Country Gentleman
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